[黒川文雄のゲーム非武装地帯] 第23回: 五十嵐孝司「私はインディーズではありません」

  • 2016年11月08日

計画性のある/なしでいえば、計画性はあったほうがいい。しかし、世の中には常に対(つい)になるような言葉や行動が存在する。諺(ことわざ)を例に、よくいわれる「急がば回れ」に対になる諺として「案ずるより産むが易し」や「善は急げ」というではないか。世の自己啓発本や、夢を記録するノートはないよりはマシで、ある程度の計画や目途や途中経過を確認したほうが物事の進捗を確認する上では重要な要素だと思う。

大手群雄割拠のTGSで急きょ出展中止になるブースもある

ゲームコンテンツという狭いカテゴリーでいえば、東京ゲームショウ(TGS)に出展しているか否かが、計画や存在の証になるのではないだろうか。

最近のTGSが大手企業の出展ばかりで、2年に一度、「地球防衛軍」シリーズの発売を予定しているディースリー・パブリッシャーが中堅どころとしては奮闘している。

しかしたまたま、とある会社がTGS2016出展直前にゲームに登場するタレント関連の権利関係の問題で出展が取りやめになったと聞いた。

いろいろな事情はあるにせよ、コンテンツが完成して世の中の正当な評価を受ける日が来ることを願っている。

五十嵐孝司氏の『Bloodstained: Ritual of the Night』がTGSに出展しなかった理由

さて、そんな事情のゲームもある中で、以前から気になっていたゲームコンテンツの出展と進捗がつかめなかったのでダイレクトに本人に現在の状況を聞くに至った。

そのコンテンツは、元コナミデジタルエンタテインメント(以下、コナミ)の五十嵐孝司氏が手がける『Bloodstained: Ritual of the Night』だ。

去る7月9日、10日開催されたBitSummit 4thでプレイアブルを出展している状態のコンテンツを確認していたこともあり、おそらくTGSでもブース出展をしているものと思っていた。

しかし残念ながら、メジャー系ブースはもちろんのこと、インディーズ系ゲームブースにもその姿はなかった。

かくなる上は、私にとっては短期間だがコナミで、ごいっしょしたということを口実に話をうかがえないだろうか? と打診をしたところ、快諾いただけた。

『Bloodstained: Ritual of the Night』は、2018年の完成を目指して開発が進んでいるゴシックタイプのベルトスクロール型アクションゲーム。

本作は、コナミで『悪魔城ドラキュラ』シリーズのプロデューサーとして活躍した五十嵐氏が独立し、アメリカのKickStartersを介して約5.5億円ものクラウドファンディングに成功したゲームコンテンツプロジェクトだ。

予測はしていたが予測以上に計画が進まなかった……

公式には、6月にロサンゼルスで開催されたE3 2016でマイクロソフトブースに出展。その後、BitSummit 4thではE3版を展示した。

ゲームそのものの開発が当初の計画どおりには進まず、大きくは進展しなかったことを理由にTGSへの出展を断念したとのこと。

開発の進捗に際しては入念に、さらには五十嵐氏自身のこだわりの部分を重要視してあたっているが、やはりそこには時代の移り変わりが影響を及ぼしている点があるという。

「自分(五十嵐氏)が作りたかったクラシックなコンソール系ゲームコンテンツ開発人材の減少があるのではないだろうか……」と語る。

誤解があるといけないだが、現在のゲーム市場ならびにソーシャルゲームの乱開発の結果、かつてのゲームファンに愛されたタイプのゲームもしくはベルトスクロール系アクションゲームに精通した開発人材が、現場から徐々に減っているのではないかという推測に至ったということだ。

しかし、減少はしていても、そういう人材は必ずいるはずなのだが、見つけにくくなっているのではないかとのこと。

ちなみに、「そういうゲームコンテンツを開発できるという人材は、自分らと同じくらいけっこう年配なんです……」と五十嵐氏は苦笑した。

さらには、ゲーム開発用エンジンの共用化が進んだことで、開発環境が変化してきたこともあるという。

ゲームコンテンツの開発エンジンそのものはオープンソースであり、カスタマイズが効くが、実際にはそこに手を入れるのはある程度の開発スキルやオープンソースプログラムへの理解が不可欠だという。

五十嵐氏がかつて所属していた大手の会社のように、フルスクラッチでゲームエンジンから開発するという手法ではないため、清濁を併せ飲むくらいのスタンスで臨む必要があるということだろう。

苦しい局面ばかりではなく、追い風もある。

『Bloodstained: Ritual of the Night』のパブリッシャーとして、イタリアに本拠を置く、505Gamesが支援を約束しているが、ファイナンス面でもサポートを約束してくれている(505公式サイトでもすでに告知が行われており、最恵国待遇ともいえるものだろう)。

さらに、505は五十嵐氏の意向には強い信頼を示してくれており、「IGA(五十嵐氏の愛称)がOKならば全部OK」という絶対的な信頼関係があるという。

自分はインディーズ開発者ではない……

「おそらく、11月ごろには、KickStarterの支援者向け掲示板で新しい発表できると思います」と五十嵐氏はいった。

おそらく、開発を行っていく上で直面している課題をクリアにする準備ができたということだろう。そこにはクラウドファンディングで大きな資金を預かった開発者としての顔と、経営者としての側面を感じた。

「ちなみに、僕は自分をインディーズゲーム開発者だと思っていません。」

「インディーズというイメージはお客さんではなく、自分が作りたいものを作っているという感じがあるんです。もちろん、それに共感するお客さんもいるかもしれない。そして、その考え方を持ったインディーズがいいとか、悪いとかではないと思っている。」

五十嵐氏自身は、「お客さんありきでコンテンツを開発し、それを届けること、さらに自分が創りたいもので、ココをこうすればお客さんがよろんでくれるんじゃないか、という裏切らない作品を創っていきたい」と締めくくった。

ゲーム開発のプロフェッショナルとして悩み苦しんだ分、今まで以上にいいコンテンツにして世に送り出してくれることだろう。

『Bloodstained: Ritual of the Night』発売までは時間はかかると思う気持ちがある反面、五十嵐が創るのならばじっくりと待とうという気持ちを新たにした。