[黒川文雄のゲーム非武装地帯] 第2回: ゲームコピー千夜一夜物語~コピーするもの、されるもの

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ゲームというデジタルエンターテイメントが生まれてから、その歴史はコピーとの戦いでした。今回はゲームのコピーについてのトピックについて、話をします。

ゲームのコピーとその歴史

ゲームのコピーは、大きく2つに分けられます。1つは、「海賊版」といわれるコピーされたソフトです。これは『スペースインベーダー』の時代から、今も大きくは変わっていません。さかのぼれば、スーパーファミコンのソフト時代にピークを迎え、「100 in 1」のようなおそろしいコピーソフトが香港の路上で購入することができるなど、大量に出回りました。

その後、パブリッシャーやハードメーカーの規制、訴訟が強化されましたが、根絶することはできませんでした。現に今もデータバックアップと称したエミュレーターマシンは流通しています。ハードウェアの供給がなくなってしまったソフトをプレイするためのハードウェアとしては否定しませんが大半は違法に使用されることを前提にしていると思われます。

つい先日、任天堂とゲームメーカーが提訴していたマジコン※輸入業者に対しての訴訟判決が下り、5年がかりの裁判の結果、約1億円の損害賠償金を支払いが命じられました。この金額を大きいと思うか少ないと思うかは別の議論として、1つの決定がなされたことは重要なことだと思います。

※不正コピーしたデータを利用できる機器

もう1つのコピーは、あってはならないコピーです。それはヒットコンテンツのゲーム内容をそのままに、キャラクターやグラフィックを変え、若干のシステム変更をしたものです。

ガラケーやスマホ系のコンテンツでヒットコンテンツが生まれると、数カ月後にはそのゲームの(よくいえば)フォロワー的なゲームがローンチされることがありました。そのトレンド(流行)は2013年にピークを迎えましたが(もちろん今でもその傾向は若干ありますが)、現在は徐々に収束しています。その理由は、コンテンツの需給のバランスが完全に崩壊して供給過多に陥っていることと、仮にヒットしたコンテンツがあっても、そのトレンドの変化があまりにも早く、コピーして出したころには目新しさがなくなっていることが挙げられます。

ゲームというカルチャーにおいて、悪しきコピー文化が映画や音楽、文学などと異なる点は、デジタルデータである部分があると思います。プログラマーが作ったソースコードを解析し、それをコピーして少し改変してしまえば、リリースすることができるということが大きな違いです。

ツムツムの元メンバーがプロデュース?

そんなことを考えていた昨年末のことです。気になったニュース記事とコンテンツに目が止まりました。

それは、DreamRockertの『くっつきパズル ピコ』という新作パズルゲーム事前登録開始のニュース記事を読んだときのことです。

その記事によると、『くっつきパズル ピコ』は日本でも常にランキング上位の大人気ゲーム『LINE:ディズニー ツムツム』の元プロジェクトリーダーがゲームシステム、イベント設計を手掛けてプロデュースしたパズルゲームであるということが謳われていました。

しかし、この記事にとても大きな違和感を覚えました。私が在職したNHN Japan(現在はNHN PlayArtとLINEに分社化)は、人事異動や離職がよくある会社です。しかし、私が知る限り『LINE:ディズニー ツムツム』のコアメンバーは一貫して変わっておりませんし、退職もしていません。となると誰か? ということになります。

実際にDreamRocketのWebサイトから問い合わせを行ってみましたが、1週間というこちらの指定した期限内に返答をいただくことはできませんでした。

このコンテンツはツムツムをコピーしたものではないと思いますが、今回のケースは別に珍しいものではありません。

私の感覚では、とあるゲームがヒットすると、後日、または後年に「あれはオレが作った」という人が最低でも3人くらい現れます。それはそれで笑い話や業界レジェンド、うわさ話の程度ならば面白いのですが、新作のゲームにおいて、「ヒットした『◯◯◯』を作ったクリエイター」が、と明確に訴求するのはやや良識に欠けるのではないかと思うと同時に、それが事実ではないとしたら過剰告知、過大告知に当り、ユーザーへの不当な案内に当るのでないかと思うのです。

真っ当な意味で、ある企業や組織からスタッフやリーダーが退職することはあります。それによって、彼らが持っていた開発スキルやナレッジが「流出」するケースも否定できません。むしろ、それによってゲームというカルチャーは多様化を迎え、ヒットを継続してきたという歴史的な側面もあります。

3D格闘ゲームなどもその一例です。開発スタッフが人事評価や給与面での不満をもって退社する、リストラ対象になる、人間関係に嫌気をさして辞めるなどの例がありますが、たいがい同業他社に再就職して、そこで新しい種として活躍の萌芽として成長します。ゲームに限らず集団製作のコンテンツにはそれは切っても切れないものだと思います。

コピーコンテンツを否定するつもりは毛頭ありません。

僕の好きなギタリストのエリック・クラプトンも、少年時代にブルースマン・ロバート・ジョンソンのギタープレイをコピーしまくったといわれています。しかし、そのコピーにとどまらず、オリジナリティを付加し続ける努力を重ねたことで、逆にコピーされる対象に登り詰めたことでしょう。

稀代の落語家、故・立川談志は弟子たちにこういいました。

「よく芸は盗むものだというがあれは嘘だ。盗む方にもキャリアが必要なんだ。最初は俺が教えた通り覚えればいい。盗めるようになりゃ一人前だ。時間がかかるんだ。教える方に論理がないからそういういい加減なことを云うんだ。」(立川談春『赤めだか』より)

つまり、コピーをする方にも技術やセンスが必要で、さらにそれを消化してオリジナルとして披露するにも技量が必要ということです。くれぐれも、小手先のキャッチ「コピー」や見た目に惑わされないようにしましょう。『くっつきパズル ピコ』に関しては正式にサービスが始まったら遊んでみたいと思います。