VAMPIRE HOLMES×ワルキューレの冒険 ~時の鍵と神の子~【ゲームレビュー】

シャーロック・ホームズを主人公に、プレイヤーが助手役(ワトソン)として謎を解いていく脱出ゲーム。開発したのは、オリジナルのアニメやラジオ局といった、独自コンテンツを企画制作している株式会社CUCURIだ。最新作となる今回の「VAMPIRE HOLMES×ワルキューレの冒険 ~時の鍵と神の子~」で、実に11作目となる人気シリーズであり、コミカライズやアニメ化もされている。

謎を解かない推理をしない名探偵がマーベルランドで大活躍

世界でいちばん有名な名探偵といえば、シャーロック・ホームズで異論はないだろう。1887年にコナン・ドイルによって生み出されたこの名探偵は、100年以上経つ現在も、代を継ぎながら「シャーロッキアン」と呼ばれる熱狂的なファンを擁し続け、さまざまな創作のテーマやモデルとして未だに高い人気を誇っている。本作も、そんなシャーロック・ホームズの翻案シリーズであるのだが、なんというかこのホームズ、すこぶるやる気がない……。

もともとクセの強いキャラクターとして知られているホームズだが、知りうる中でここまでやる気がないのは初めてだ

そんな自堕落でニート気質なホームズといっしょに、洋館から脱出するのが今までのシリーズだったのだが、『ワルキューレの冒険』とコラボしている本作は少々毛色が異なっており、いきなり異世界であるマーベルランド(『ワルキューレの冒険』の舞台)を訪れることになる。

ちなみに『VAMPIRE HOLMES』シリーズでは、これまでも「神奈川県本庁舎からの脱出」など、異色のコラボレーションを実現してきたが、今回はバンダイ・ナムコ統合10周年記念企画である「カタログIPオープン化プロジェクト」の一環として、往年の人気タイトルである『ワルキューレの冒険』とコラボレーションしている。このプロジェクトは、バンダイ・ナムコゲームスが持つコンテンツのうち17作品のIP(Intellectual Property、知的財産権)を開放し、ある程自由にコンテンツで使用してもいいという取り組み。本シリーズの10作目でも同プロジェクトを利用し、『パックマン』とコラボしている。

サンドラやズールなど、往年のファンには懐かしいキャラクターも目白押し。もちろんワルキューレも登場する

マーベルランドを探索するオーソドックスなADV

本シリーズは、もともとは閉じ込められた洋館からの脱出ゲームだったのだが、本作では依頼により『ワルキューレの冒険』の舞台となったマーベルランドに赴き、時の鍵で悪の化身ゾウナを封印する、というあらすじになっている。それゆえ、脱出という受動的な要素よりは、捜索、聞き込みといった、広い範囲での能動的な要素が目立つようになっている。そもそもの脱出ゲームが、広範なアドベンチャーゲームをシュリンクしていったことで生まれたことを考えると、ジャンルが先祖返りしていると言えるだろう。

街中で情報を集め、先に進むというアドベンチャーゲームとしてはオーソドックスな作り

また、本作ではオリジナルへのフィーチャーとして、モンスターとのバトルも発生する。ただし、原作のようなアクション的な要素はなく、「剣」と「魔法」と「魔法の盾」のどれかを選ぶ、三すくみを利用したコマンド方式で、選択時に時間制限はない。さらに、間違えると正しいものを教えてくれるという親切設計になっている。これまでのシリーズを遊んできたユーザーも、特に構える必要はなく、気軽にプレイできるはずだ。

剣は魔法の盾に、魔法の盾は魔法に、魔法は剣に強い。この三すくみは絶えず画面に表示されており、間違えてもペナルティはない。また、敵の攻撃属性はキャラクターを覆うオーラの色で判別する

一部の敵との戦闘は、クイズ形式で行われる。出題難度はかなり優しめで、間違えてもヒントが出るだけでペナルティはない

フルボイスでワルキューレたちとの絡みが楽しめる

ストーリーに重点を置いている本作は、もちろんフルボイスになっており、ホームズと『ワルキューレの冒険』のキャラクターたちとの掛け合いを楽しめる。ゲーム内TIPSでも音声をONにすることを推奨されるが、音によるゲームヒントの有無については確認できなかった。すべてを解いたわけではないので、先に進めばそういった要素が登場するかもしれない。なお、本作で一風変わっているのが、ホームズ役の瀬名快伸さんが原作、脚本を務めているという点。どちらかというと、原作、脚本が主人公の声優を務めているといったほうが正しいだろう。もともと放送劇団を主宰されていたようで、そこでの役者の経験からか、周りの声優の演技と比べても特に違和感はない。

瀬名快伸さん演じる、主人公のホームズさん。やる気がないばかりではなく、ちゃんと決めるところは決める主人公なのだ

無料で遊べるのはStage 6まで

章にあたるStageは細かく分かれており、概ね戦闘が終了すると次のStageへと進んでいく。全部でStage 16まであるが、無料で遊べるのはStage 6まで。それ以降はStageごとに課金を行うか、一括課金で最後まで遊ぶかを選ぶことになる。なお、金額はStage 7から13までが各120円、Stage 14から16までが240円。一括だと480円で済むので、無料のSTAGEを遊んで興味があるなら一括購入が圧倒的にお得だ。

チャージすることで先のSTAGEに進むことができる。ちなみにSTAGEを飛ばして購入することはできない

個性的な出演者が演じる会話劇を心行くまで楽しめる

脱出ゲームとジャンル付けされているが、解くべき謎もゲームの進行もかなり優しく親切に作られている。謎に詰まって進めなくなることはあるかもしれないが、ゲームオーバーはない模様なので、じっくり遊ぶにはいいだろう。ただし、高難易度のアドベンチャーを期待するのは、本作ではお門違いであることを明記しておく。本作は謎に頭を悩ますより、ニート一歩手前のホームズたちによる、小気味良い会話劇を堪能することがメインなのだから。

  • 使用した端末機種:iPhone 6 Plus
  • OSのバージョン:iOS 9.2
  • プレイ時間:約3時間
  • 記事作成時のゲームのバージョン:1.0.1
  • 課金総額:0円

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