【西川善司のモバイルテックアラカルト】第11回: 2015年を振り返る

今回は、2015年最後の回と言うことで、「2015年を振り返る」というテーマにします。テーマをいくつか挙げて、振り返ってみようかと思います。「振り返る」ネタなので、一部、今年の連載の通常回と話題が重なる部分がある点はご了承ください。

[テーマ1] 2015年にいちばん遊んだスマホゲーム:Ingress

Game Deetsでも、別のライターの方が連載で楽しく語っていますが、ボクも、スマートフォン(スマホ)では、「Ingress」をプレイしています。2015年12月時点でレベル11です。始めたのがちょうど1年前くらいでしたから、約1年でレベル11に到達したことになります。

スマホのゲームは、ほんと、今はこれくらいしかプレイしていません。

始めたきっかけは「友人のすすめ」というヤツです。実は、その同業者の方が家庭をほぼ崩壊させるほど夢中になっていたので「そんなに面白いの?」と聞いたところ、熱烈歓迎的に熱心に勧められたんですね。そういえば、今年、Yahoo!知恵袋にこんなネタ的質問が投稿されていましたが、最初、その同業者の奥さんの投稿かと思いましたよ(笑)。

このゲームは、スマホを通してしか見えないが、現実世界の特定の場所に設置されている「ポータル」と呼ばれる拠点を奪ったり、守ったりする陣取り合戦的な内容です。実際に、外に出て行かないと行けないため、運動不足解消の「ウォーキングの動機付け」としてプレイしています。

近隣の公園や神社、お寺、LAWSON、郵便局などがポータルになっているので、前日せっかく自分が占領したポータルが翌日、敵のものになっていると奪い返したくなって、ついに外に出て行きたくなります。

運動不足に悩んでいる人にはおすすめのスマホゲームといえます。

Game DeetsにはIngressに関連した連載もあるので、詳細はそちらを参照してみてください

[テーマ2] 2015年のスマートフォン事情:大画面スマホの不作

前回の話と被りますが、ボクは大画面のスマホ以外に興味がありません。理由は前回記事「大画面☆マニアとしての西川善司的スマホ選び 」を参照してほしいのですが、2015年は大画面スマホが不作でした。「え?」といわれそうなので、具体的にいった方がいいですかね。「6インチ以上のスマホが不作」……でした。ボクの場合、6インチ未満のスマホは「小」画面サイズ機に分類しているので(笑)。

2012年のサムスンのGalaxy Noteあたりを皮切りに、2013年から2014年にかけてスマホの大画面化が加速しました。6インチ台のスマホがかなり発売されたんですが、2015年は、「2014年はちょっとやり過ぎちゃったかな」といわんばかりに、5インチ台への揺り戻しが加速化して、ボクが「お!」と思うような機種はあまり出てきませんでした。

前回記事の執筆後も、いろいろ悩んだ結果、結局、現在愛用しているソニーの6.4インチスマホのXPERIA Z ULTRAをもうしばらく使うことにしました。2016年の春モデルに期待したいと思います

それにしても、ここ数年のスマホの在り方って、電話とタブレットの「いいとこ取り」を模索しているような気がします。であれば、もう少しタブレット寄りの大きい画面のモデルがあってもよい気がするんです。具体的には、XPERIZA Z ULTRAの6インチ台中盤からAQUOS PADの7インチ前半くらいまでの。いや、8インチ台でもいいです。いずれにせよ5インチ前半の画面サイズの機種が多すぎて現在、それら競合同士の潰し合いの市場になっている気がします。

「通話機能対応のタブレット」がもう少し登場してもいいのに、とも思います。2015年はソニーの「XPERIA Z4 Tablet」(ドコモ版)くらいしかでませんでしたからね

いえ、決してボクはタブレットを「電話しまくり機」として使いたいわけではないんです。前回記事でも触れたようにボクは、電話を受けることはあっても自分からほとんど掛けない(掛ける相手もいない)ので、「普段はタブレットとして使うが、必要なときに通話もできる」モデルがほしいんですよね。おそらく「タブレットメイン、電話機としてときど使える」というニーズは一定量、あると思うのです。

2016年は「通話もできるタブレット」の充実も願いたいと思っています。

[テーマ3] ハードウェア技術:ハイエンドスマホ界を騒がせたSnapDragon問題

個人的な振り返りから離れて、業界を俯瞰視点でみると、2015年のスマホ事情で避けて通れないのが、QualcommのSoC(System on a Chip)の「SnapDragon 810問題」でしょうか。

SnapDragon810は、64ビット対応のARM Cortex A57を4コア、同A53を4コア備えた8コア構成のCPUを搭載し、これらの4コア+4コアをシステム負荷に応じてやりくりして駆動するbig.LITTLEテクノロジーに対応しています。また、GPUにハイエンドモデル「Aderno 430」を搭載し、4K映像のエンコード、デコードに対応したビデオプロセッサも搭載します。仕様上はかなりのハイスペックSoCで、2015年の春夏モデルのハイエンドスマホではこのSnapDragon810採用モデルが多かったのです。

ところが、そのフルスペックを用すると発熱量が大きいことが判明し、パソコンのように電動ファンで冷却することができないスマホでは発熱を抑えるのに動作クロックを下げるか、実動コア数を削減する制御が必要となりました。結果、期待どおりの性能が出ないモデルが続出してしまったのです。本稿では、あえて機種名の列挙は避けておきますが、「SnapDragon810 スマホ 発熱」あたりで検索するといろいろと出てくると思います。

2015年の秋冬モデルでは、この「SnapDragon810」問題に対策すべく、多くのハイエンドスマホが、コア数を削減した下位モデルの6コアSoCの「SnapDragon808」の採用に切り換えてきました。

SnapDragonの開発元のQualcommは、このSnapDragon810問題に対策した新版SnapDragon820を発表しています。おそらく、2016年のスマホでQualcomm系SoCを採用するものは、SnapDragon820を採用してくると思われます。

[テーマ4] 映像技術:HDMI2.0aの台頭。4Kの普及。8Kの到来

今年は、ディスプレイ製品やテレビ製品は4Kモデルが話題の中心となりました。今期モデルで登場したハイエンドスマホのソニーの「XPERIA Z5 PREMIUM」は4Kディスプレイを搭載し、いよいよスマホにまで4Kの波が押し寄せてきたことを実感させてくれました。

4K……身近にはなりましたよね

XPERIA Z5 PREMIUM

実際、40インチ台の4Kテレビは12万円前後で変えるようになりましたし、いちばん割高な60インチクラスのモデルでも50万円台で買えるようになりました。よくテレビは「1インチ・1万円台を切ると低価格化と普及が加速する」といわれていますから、まさに4Kテレビは普及期に突入していきそうな勢いです。

それまで試験放送のみだった4K番組の放送も、2015年春には、本格商業放送が始まりました。124/128度 CSデジタル放送の「スカパー! プレミアム」への加入は必要ですが、「4Kコンテンツが放送されるようになった」という事実は大きいです。

また、2015年秋からはインターネットを介したビデオオンデマンド(VOD)サービスの「NETFLIX」が4K番組配信対応でスタート。2015年モデルのほぼすべての4Kテレビ製品のリモコンには、昨年モデルまでにはなかった[NETFLIX]ボタンが付きました。これは2015年のテレビ界では象徴的な事象だったと思います。

セルソフトの方にも4K対応化の波は押し寄せてきています。

CEATEC2015のパナソニックブースの様子。4Kブルーレイと呼ばれるUHDブルーレイはパナソニックが仕掛け人である

2015年1月には、4Kブルーレイこと「ULTRA HD BLU-RAY」(UHDブルーレイ)の仕様が発表になり、2015年10月のCEATEC2015では、パナソニックがUHDブルーレイ再生に対応した世界初のブルーレイレコーダー「DMR-UBZ1」を展示。実際これは11から実勢価格約35万程度で販売が開始されました。残念なことに、UHDブルーレイソフトは来年、2016年からの発売になるようですけれども。

ところで、4Kコンテンツには、これまで手が入れられてこなかった映像新技術の「広色域」「ハイダイナミックレンジ」(HDR)の要素が盛り込まれたこともホットトピックです(後述の8Kも同様です)。4K/8Kの映像コンテンツ用に定められた映像規格ITU-R BT.2020では、現実世界の物体色の99%を再現できる「広色域」規格と、理論コントラスト値最大1万:1相当(便宜上、こう記しましたが、実際には最大輝度の規格が1万nitです)の「HDR」規格が規定されたのです。

CEATEC2015で公開された三菱電機のレーザー光源採用の4K液晶ディスプレイ試作機。BT.2020で規定される広色域の99%を再現可能であることがアピールされていた

しかも、2015年春にはそれらの新要素の伝送に対応した新HDMI規格「HDMI2.0a」も規定されました。
UHDブルーレイは「広色域」「HDR」の両方に対応することが明言されていますから、2016年は解像度だけでなく色もコントラストもリアルな映像新時代のスタートを予感させてくれます。

映像新時代と言えば、4Kの次、8Kについても着々と準備が進められています。

2015年7月に総務省から発表された「4K/8Kロードマップ」によれば、2016年にBSデジタル放送で8Kの試験放送を早くも開始する予定で、翌々年の2018年には、8Kの本放送を開始することになっています。8Kを強力に推進するNHKでは、2020年のオリンピックは8Kでの中継を実現したい思惑があるので、「4K元年」と言われる2015年の5年後、2020年は早くも「8K元年」と呼ばれているかも知れません。

2015年7月に総務省が発表した「4K/8Kロードマップ」の概略図

[テーマ5] 仮想現実(VR):盛り上がったVR

今年を語る上で「仮想現実」(VR)を外すことはできないでしょう。

VRブームの仕掛け人ともいえるOculus VRはE3 2015で、ついに最終市販版「CV1」(Consumer Version1)を公開しました。5月にはCV1の動作推奨PCのスペックが公開になりましたが、これがハイエンドもハイエンドのハイスペックだったこともあり、導入への敷居は意外に高いことが判明し話題になりました。
それと、Oculus VRは、2014年後期に日本支社を設立しており、2015年は日本のゲーム開発者やその他のコンテンツ制作者に対して、同社のVR-HMDである「Oculus Rift」の訴求を勢力的に行っていました。2016年は、ついにCV1が実際に発売になりますから、日本支社の存在感はいっそう高まっていくはずです。

市販版「Oculus Rift CV1」をOculus Rift用新コントローラー「Oculus Touch」と共に体験する筆者。体験しているVRコンテンツはUnreal Engine4ベースの新作FPSスタイルゲームデモ「Bullet Train」

VRブームのもう1人の立役者、ソニーのProject Morpheusは、昨年公開された試作初号機から仕様を改め、より技術的に洗練度を増した第2試作機を公開しました。新型試作機はフルHD(1,920×1,080ピクセル)解像度の有機ELパネルを採用し、90Hz、120Hzのリフレッシュレートに対応しています。東京ゲームショウ2015のタイミングでは名称を「PlayStationVR」に改めましたが、発売時期は2016年と語られたのみで詳細は不明です。

VRに関しては、「カジュアルVR」ともいうべきカテゴリのVRも広がりを見せています。

スマホを装着するだけで、簡易的なVR-HMDを構成できるものが人気を博し、「これこそがVR体験の本命」と見る向きも出てきているほどです。

1,200円~3,000円で販売されているボール紙製/プラスチック製の「ハコスコ」が、最も手軽なカジュアルVR-HMDですが、最近は、中国産の同系製品も多数出てきています。かくいうボクも2個ほど買ってしまいました。いずれ、この連載でも紹介しようかと思います。

サムスンのGearVR

そうそう、スマホメーカーの巨人、サムスンも12月より一般向けに同社製スマホ「Galaxy S6」シリーズを装着して使うVR-HMD「GearVR」を13,800円(税別)で発売を開始しています。

こうしたカジュアルVR-HMDにおあつらえ向きなのが360°の全天全周を撮影した映像です。その全天全周映像を撮影したり、配信したりする環境も整ってきました。

YouTubeは2015年春に360°全天全周の2D映像の提供配信に対応し、そして11月には360°全天全周の3D映像(≒VR対応)のサポートも開始しました。また、誰でも気軽に360°全天全周の動画・静止画撮影(+配信)ができるリコーの「THETA S」(実勢価格4万円前後)が2015年10月に発売となりました。

リコーのTHETA S

つまり、一般ユーザーが気軽にカジュアルVRコンテンツを制作する(≒撮影する)手段・工程と、それをカジュアルVR-HMDで楽しむ環境が完成したということです。

もともとVRは、疲労や酔いの観点から長時間連続で体験することが奨励されませんから、少し楽しんだだけで「お、凄いね」といってもらえるような即効性に優れたものが望ましいのです。その用途に、こうしたカジュアルVR-HMDと360°全天全周映像はおあつらえ向きです。こうした「カジュアルVR」は、VRを一部のマニアのためのもので終わらせず、一般への普及への足がかりとなっていくような気がしています。

というわけで、今年は以上です。また、2016年にお会いしましょう。

よいお年を!

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