【法林岳之のFall in place】第9回: スマートフォンの売れ筋と売り時

9月のiPhone 6s/6s Plusに続き、各社から秋冬モデルが順次、発売され、携帯電話ショップや家電量販店の店頭は新製品が並ぶようになってきた。この冬商戦で「そろそろ次のモデルに買い換えようかな」と考えている人も多いだろうが、その一方で、店頭の価格を見て「なかなかすぐには買い換えられない」と躊躇している人も少なくないだろう。

販売ランキングのカラクリ

以前にも本連載で指摘したように、昨年あたりから各社のスマートフォンは全体的に価格が高くなる傾向にあり、iPhone 6s/6s Plusも含め、ハイエンドモデルは10万円を切るところまで高騰している。分割払いなどの手段が選べるとはいえ、さすがにこれくらいの価格になってくると、ユーザーとしては買い換えに対して、慎重にならざるを得ない。スマートフォンそのものの完成度が高められ、一時期に比べ、いわゆる「ハズレ」と呼びたくなるようなモデルはなくなってきたが、それでも2015年夏に発売された一部のモデルのように、発熱が問題視されるケースもあり、ユーザーの間には不信感がくすぶっている。

そこで、ユーザーとしてはトラブルが少ない機種を選びたいという観点から、インターネット上に掲載されているレビュー記事を参考にしたり、購入したユーザーの投稿をチェックしたりする。できれば、店頭でデモ機を触りながら、実際の操作感を試したいところだが、店頭にデモ機が置いてなかったり、地域によっては店舗が遠いといったこともあり、誰もがじゅうぶんに試せる状況にないケースもある。

もう1つの指針としてよく参照されるのが、各所で発表される販売ランキングだ。「売れている機種であれば、おそらく大きな問題はないだろう」という判断もあるが、この販売ランキングは少し注意が必要だ。というのもスマートフォンや携帯電話の販売ランキングは、テレビやデジタルカメラといった他の家電製品と集計されるデータが大きく異なるためだ。

国内で各携帯電話事業者から買う場合、大きく分けて2つのルートが存在する。1つはドコモショップやauショップといった看板を掲げた各携帯電話会社の系列店。俗に、キャリアショップなどと呼ばれるが、これらの店舗は各携帯電話会社から販売やサポートを請け負った代理店が運営している。もう1つは家電量販店や併売店と呼ばれるところで、各携帯電話会社から端末を仕入れ、各店舗の店頭で販売している。

現在、国内で発表されるスマートフォンや携帯電話の販売ランキングは、一般的に家電量販店や併売店などで販売されたデータを集計したもので、キャリアショップで販売されたデータは基本的に含まれていない。なぜなら、キャリアショップは各携帯電話会社との契約上、販売データなどを外部に開示できないためだ。

「でも、どこでも同じようなものが売れるだろうから、ランキングに大差はないのでは?」と考えるかもしれないが、これがなかなか携帯電話の販売の難しいところで、意外に差が出てしまう。キャリアショップについては、3社とも同じように全国規模で展開しているが、それぞれに店舗数も違えば、規模も異なる上、ユーザー層も微妙に違う。たとえば、NTTドコモは現在、国内に約2400店のドコモショップを展開しているが、全般的に保守的なユーザーが多いとされ、相談しながら購入できるドコモショップでの販売が堅調だとされている。他社に比べ、やや年齢層の高いユーザーが多いことも関係しているようだ。

これに対し、ソフトバンクは家電量販店などでの販売に強いといわれている。実は、ソフトバンクが買収する前のJ-PhoneやVodafoneでは、キャリアショップでの販売が多かったが、ソフトバンクに移行する際、大規模なキャリアショップの統廃合があり、家電量販店などに同社の専用カウンターを設置したため、現在は家電量販店での販売が多いとされている。auについては元々、既存のauショップに加え、トヨタ系ディーラーのPipitなどでも販売されており、こちらも非開示の情報が多いといわれている。逆に、併売店の状況が影響してしまうこともある。たとえば、併売店がキャンペーンやセールなどの形で、一時的に特定機種を多く販売したり、型遅れの機種の販売をまとめて引き受けるようなケースもあるからだ。

機種や販売状況によっても特徴が表われる。たとえば、9月に発売されたiPhone 6s/6s Plusは、以前の記事でも触れたように、今年は各社が予約販売に注力したため、キャリアショップでの販売が健闘したといわれている。都市部に住んでいると、家電量販店での販売が目立って見えるが、郊外や地方では相変わらずキャリアショップの人気は根強い。

販売ランキングが間違っているというわけではないが、こうした携帯電話業界特有の事情があることを踏まえた上で、売れ筋をチェックして、自分のスマートフォンや携帯電話を選ぶ参考にした方が賢明だろう。

買ったときに売ることを考える

ところで、これだけスマートフォンの価格が高騰してくると、誰もが「少しでも安く買いたい」「節約したい」と考えるはずだ。セールなどで安く買う術もあるが、それとは別に新しい機種を購入したときに、ぜひ覚えておきたいことがある。それは「使わなくなったものは売る」ということだ。

ここ数年、国内ではスマートフォンの中古市場が徐々に拡がり始めており、それにともなって、使わなくなったスマートフォンを買い取るサービスがかなり増えてきている。もちろん、モデルによって、買い取り価格の差はあるが、人気機種であれば数万円以上で買い取ってもらえることも少なくない。中でもiPhoneやiPadは世界で基本的に共通のモデルを販売しているため、国内で買い取られたiPhoneやiPadが海外の業者に引き取られていくという販売ルートができあがっており、買い取り価格も高値で安定している。たとえば、今からちょうど約2年前に発売されたiPhone 5sは、64GBのモデルに2万円以上の買い取り価格が付いており、未使用の新品であれば、3万円を超える価格で買い取られるという。

ただ、ここで気をつけなければいけないのが買い取ってもらうスマートフォンの状態だ。買い取り業者によって対応はさまざまだが、やはり、付属品や箱がない商品は買い取り価格が少しずつ減額されてしまう。中には「ガラスが割れていても買い取る」という業者も存在するが、当然きれいな状態の品物の方が買い取り価格は高くなる。だからこそ、買ったときから売るときのことを考えて、箱や付属品などは取っておき、本体も大切に使うようにするわけだ。

また、こうした買い取りサービスとは別に、最近、各携帯電話事業者が買い替えユーザーを対象に、下取りサービスを提供していることもある。ここも下取り価格はiPhoneが優勢だが、各携帯電話会社も自社製品の保守用や補償サービス用に中古端末を活用したいという考えがあり、下取りサービスにも積極的に取り組んでいる。ちなみに、下取り価格は各携帯電話会社の下取りサービスのページにも掲載されているので、買い換えを検討している人はチェックしてみることをおすすめしたい。

買い取りではスマートフォンに保存されている個人情報などの扱いが気になるところだが、Androidスマートフォンであれば、Android標準の機能の保存データを暗号化し、その後で初期化をすれば、基本的には復元される心配はない。専用ツールで個人情報をすべて消去するサービスを提供している買い取り業者もあるので、気になる人はそういう業者を利用するのも手だ。