【西川善司のモバイルテックアラカルト】第45回: CEATEC2017に見た最新モバイルテックたち(後編)

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2017年10月3日(火)~6日(金)までの4日間、幕張メッセにて開催されたCEATEC 2017。今回も、前回から引き続き、CEATEC2017で見かけたモバイル技術のレポートを続けたいと思います。

2020年の東京オリンピックはスマホVRで視聴可能に?

2020年の東京オリンピックは、NHKが8Kで放送することを目指していて、その準備は着々と進められています。

「え?」と思われそうですが、2018年12月からは試験放送ではなく、8Kの実用放送が始まります。

ちなみに、現在、発売されている4Kテレビや8Kテレビ(今はシャープ製の1モデルだけですが)では見ることはできませんので、2018年に発売されるこの8K放送に対応したテレビ製品の購入が必要です。

既存の4Kテレビ製品や8Kテレビ製品では、2018年に発売される対応チューナーを購入すれば見ることができます……と言いたいところですが、視聴するには左旋電波を受信できるアンテナも必要ですので敷居は高そうです。

CEATEC2017では来年から実用放送が始まる8K放送に関連したブースも公開されていた

さて、東京オリンピックは8K放送だけでなく、全天全周の360°ビデオでも配信できないか、検討が進められています。

しかも、スマートフォンを利用した、いわゆる「スマホ」VR的なデバイスをターゲットにしていて、5G回線で視聴できることを目指して関連技術の開発が進められているのです。

この近未来的な実験デモを行っていたのは、シャープとNTTドコモの2社でした。それぞれのブースでほぼ同一のデモを行っていたのですが、対外的には「2社共同開発」ということになっているそうです。

ブースで体験できたVR-HMDは、シャープが開発した1,008ppiという凄まじい高解像度のIGZO液晶パネルを2枚搭載したもので、1枚あたりのサイズは2.87インチ、解像度は1,920×2,160ピクセルです。

両眼で3,840×2,160ピクセル……すなわち4K解像度と言うことですね。

試作VR-HMDを装着してコンテンツを楽しむ筆者。VR-HMDのボディは3Dプリンター製。このVR-HMDに搭載されている液晶パネルは、昨年のCEATEC2016で展示されていたものと同一だと思われる

ブースで公開されていたのは、7,680×3,840ピクセル(アスペクト2:1の8K)で60fps撮影された全天全周映像のうち、ユーザーが見ている画角約100°前後の視界を1,920×2,160ピクセル×2眼分で切り出してVR-HMDにリアルタイム表示させる……というデモでした。

ユーザー体験としては、片目あたり1,920×2,160ピクセル、両眼で4KのVR映像を見ていることになります。

筆者も体験しましたが、ユーザーを取り囲むようにして演奏される雅楽演奏や、砂浜で繰り広げられる琉球舞踊などが楽しめました。

昨年、シャープが次世代VR-HMD向け液晶パネルとして公開した1,008ppi液晶パネル。これが今回、試作されたVR-HMDに採用されていたようだ

このデモの映像コンテンツだけを見ただけでは「両眼でフルHD前後の解像度の現行VR-HMD製品よりはちよっと綺麗な360°ビデオだね」というだけの感想で終わってしまいますが、これが屋外でリアルタイム携帯電話網で配信されるコンテンツを想定したもの……と聞けば「すごい」と驚いてしまうことでしょう。

NTTドコモは、2020年ごろに次世代携帯電話通信網の5G回線の実用化を目指しており、その通信速度は理論最大値で約10Gbpsにまで達します。

しかし、一般ユーザーの1人あたりの実効帯域はもっと低いはずで、さすがに8K/60fps撮影された全天全周映像をまるごと各ユーザーのスマートフォン(スマホVR)に配信することは困難でしょう。

しかし、5Gは通信速度だけでなく超低遅延性能もウリにしていて、現在の4Gの10倍は高速化され1ms以下になると言われています。

これだけ低遅延だと、VR-HMDを被ったユーザーの頭部の向きをリアルタイムに映像サーバー側に返すことができるので、サーバー側でスマホVRをかぶったユーザーがコンテンツのどのあたりを見ているのかを検出し、8K/60fps撮影された映像のうち、ユーザーが見ているところだけを切り出して送れる……というわけなのです。

もちろん、8K/60fpsの映像をまるごと送るよりはデータ量も削減されるので通信データ量の削減にもなります。

5G回線時代に360°の8K/60fpsビデオを携帯電話網でスマホVR向けに配信するための工夫

5G回線時代は低遅延通信が可能なので、VR-HMDを被っているユーザーの見ている視界をリアルタイムで検出し、その範囲の映像だけをサーバーから切り出して伝送する仕組みとする

2020年の東京オリンピックは、競技場ど真ん中に仕掛けられた360°カメラで撮影された映像を、おうちや出先の屋外でスマホVRで楽しめるようになるかもしれないのです。

スタジアムの座席でのライブ観戦は、「その場所に来た」という臨場感はありますが、参加選手達と同じ視点で楽しめるVR観戦は、もしかしたら、それに優るとも劣らぬリアル感を楽しめることになるのかもしれません。

今からワクワクさせられますよね。

スマホで遊ぶ「ラジコン×AR」ゲームが登場?

バンダイナムコは、ゲームファンならば誰もが知っている企業ですが、CEATEC2017に出展しているということには、多くの来場者が「なんだろう?」と思ったはずです。

ただ、展示内容はCEATEC2017の開催テーマの1つであるCPS(Cyber Physical System)にぴったりハマるテーマを展示していたのです。

「CPSってなに?」という人もいるかもしれません。

CPSとはなにか……については実は前回の本連載で簡単に紹介していますが、本稿でも軽く解説すると「IT技術と現実世界を相互干渉させることができるようなテクニック」のことです。

このバンダイナムコブースで展示されていた製品名は「メカモン」です。ポケモンじゃなくて「メカモン」です(笑)。

バンダイナムコブースでは「メカモン」が出展されていた!

バンダイナムコが考えるCPSがどんなものかといえば、やっぱり「遊び」「ゲーム」に関係するものでした。

順を追って解説しましょう。

メカモン(MEKAMON)は、スマホで操作する4足歩行のラジコンロボットです。

4足歩行といっても、犬や猫のような4本足ではなく、カニとかクモのような歩き方をします。

この4足ロボット、スマホ操作で歩きまわすだけでなく、別の人が操作する4足ロボットと戦わせることができるのです。

戦うと言っても4本足では「殴る蹴る」といった動作はできませんよね。

となれば、使うは飛び道具です。

そう、メカモンには機関銃やミサイルを装備することができ、敵からの攻撃を防ぐためのシールドも実装させることが出来ます。

メカモンの公式プロモーション映像

「BB弾でも撃つのか」と思った人もいるかもしれませんが、違います。

メカモンに取り付けられる銃火器はそれっぽい形状はしていますが、ただのプラスチック製でバネも火薬も仕込まれていないのです。

実は、発射される弾丸はスマホの画面を通すと見えるバーチャルなCG製なのでした。

メカモンはスマートフォンで操縦する

海外のテレビ番組などで行われている本格的なロボットバトルでは相手のロボットを物理的に破壊するものがありますが、さすがにこれを一般ユーザー同士でやるには無理があります。

せっかくの高価なロボットを1バトルするたびにめちゃめちゃにされては負けた方は泣くに泣けませんからね。

しかし、バーチャルワールドでやる分には、攻撃を喰らっても傷1つ付きませんから、大事なロボット(メカモン)が壊れることはないわけです。

ただ、実際にゲームとして面白くなるように、攻撃を喰らうとスマホ画面に爆炎がメカモンの上に描かれますし、ダメージが蓄積されればメカモンの動きは遅くなってしまいます。

お互いの攻撃の命中判定は、メカモン達に内蔵された4基の赤外線センサー、3軸ジャイロセンサー、3軸地磁気センサーを駆使して正確に行われるそうです。

メカモン操縦時のスマホの画面。武器使用はもちろん、伏せるといったよく使う動作はショートカットボタンに割り当てて一発で発動できるように工夫できる。操作パネルのカスタマイズもARメカモンバトルに勝つための重要な要素となるのかも?

それにしても、何も置かれていない、ただの平坦な床の上で攻撃しあっても面白みに欠けますよね。

そこでメカモンのシステムでは、床に置いたコードマーカー付きマットを認識して、スマホ越しにみるとCGの障害物を描き出してくれるような機能も提供されるのだそうです。

つまり、自分のメカモンをCGで描かれた壁や建物に隠しながら敵を迎撃できたりすることができるわけです。

武装スロットは本体や脚部などに合計で7つあり、このパーツを組み替えることで、ロボットの性能をバーチャルに変化させることができ、これもメカモンバトルの面白さを盛り立てる要素になっているのだとか。

メカモンのロボットとしての基本運動性能はどれも同じなのですが、装備した武装がたとえば「重たい装甲パーツという設定」だったり、あるいは「強力な重銃器という設定」だったりすると、あらかじめその武装パーツに設定されている特性パラメータがシステム側に反映されて、動きがのろくなる制御が行われるのだとか。

ブースでのメカモンのデモンストレーションの様子

重装備メカモンは動きは遅くなりますが、その分、装甲力(耐久力)のパラメータは上がるので攻撃を受けても頑丈な振る舞いになるわけです。

逆に軽量な武装で身を固めれば、その設定が反映されキビキビ移動できるようになるようです。

武装パーツには電気的な仕組みでパラメータが書かれていて、メカモン本体に装着するとそのパラメータが読み出される仕組みのようでした。

開発元はイギリスのベンチャー企業のReach Roboticsで、イギリス本国や北アメリカ地区ではすでに発売が開始されていて、価格はアメリカだと299.95ドルとのこと。

日本では、バンダイナムコが正規代理店になるようで、日本導入に向けて準備を進めているようです。

空飛ぶクワッドコプター(ドローン)を用いて、こうしたバーチャル世界でドッグファイトをさせるゲームプロジェクトを進めているベンチャー企業がありましたが、安全面とか遊びやすさの面で、こちらの地を這うロボット「メカモン」の方が敷居は低く、低年齢層でも遊びやすそうです。

メカモンのカスタマイズ例として展示されていたモデル。Reach Roboticsでは今後、カスタマイズパーツも順次リリースしていくのだとか。こうしたカスタマイズ性はミニ四駆に似ていて、日本のマニア層にはウケるかも!?

個人的には、せっかくバンダイナムコがコラボレーションするのであれば、ガンダムとか、ああいう日本の人気ロボットアニメとコラボレーションすると盛り上がりそうな気がします。

イヤフォンと健康管理IoTを合体させたら面白そう

スマホと連携させて活用するIoTデバイスの花形、というか主流製品はやはりApple Watchに代表されるような腕時計型デバイスでしょうか。

依然と人気の高い活動量計(アクティビティトラッカー)デバイスも、最近ではこの腕時計型IoTに統合されつつありますよね。

電気製品の世界では、2つの機能が1つに集約される展開は「よくある」進化のパターンです。

今や当たり前のように使っているテレビの録画機能も、けっこう最近まで、テレビとビデオ録画機として別々にリリースされていましたからね。

さて、そんな「IoT時代の新たなる未来展開」(!?)を予感させるものがシャープのブースで展示されていました。

「Bitescan」と名付けられたこのデバイスは、一見すると アップル製品向けの完全ワイヤレスイヤフォンの「AirPods」にそっくりです。

最近、スマホと組み合わせて使うイヤフォンやヘッドセットにこういう感じのデザインの製品増えましたよね。

で、こうした前振りをしておきながら、Bitescanはイヤフォンでもヘッドセットでもないんです(笑)。

シャープの「Bitescan」。一見するとワイヤレスヘッドセットのよう

このBitescanは、装着したユーザーがものを食べるときにどのくらい咀嚼(そしゃく:ものを食べるときに行う噛む動作のこと)をしているか、を計測するデバイスなのです。

耳にかける装着スタイルはイヤフォンなどとそっくりですが、デバイス下部の耳元に密着する部分に赤外線式の測距センサーが組み込まれていて、耳元の皮膚の動きを検知して「噛んでいるかどうか」を判別する仕組みになっています。

ものを食べるときに「よく噛まないで飲む」というのが肥満などの生活習慣病の原因の1つとなっているそうで、逆に「よく噛んで食べる」は健康に繋がるのだそうです。

「よく噛んで食べる」と胃腸の働きが促進され、さらには満腹が早期に得られやすく食べ過ぎの抑止に繋がり、顎の筋肉が発達することになってフェイスラインがすっきりとして小顔効果にも結びつくのだとか。

ブースのデモでは、被験者がお菓子のグミを食べさせられ、その飲み込む動作までの時間や噛む回数を計測して動物にたとえて診断することを実践していました。

あまり噛まないですぐ飲み込む人は「丸呑みヘビさん」、早くよく噛む人は「ちゃきちゃきウサギさん」といった具合で、なんだか昔流行った動物占い的な診断で笑えました。

Bitescanをセットしてグミを食べている筆者

結果は「ちゃきちゃきウサギさん」だった

このBitescan、咀嚼回数計測IoTとしては、魅力は低いですが、それこそ、イヤフォンとヘッドセットとしての機能もあれば、耳元に身に付ける動機付けが強くなりますし、商品としての訴求力も上がりそうです。

実際、シャープでは、そうした展開も視野に入れて、製品化に向けた開発を行っていきたい、と述べていました。

おわりに~来年2018年は何が流行る?

前後編の2回に渡っていろいろ見てきましたが、スマートフォンと連携して活用する技術や製品がいろいろ出展されていたことがわかったのではないでしょうか。

今回の前後編のレポートでは触れてはいませんが、今後、個人的に活気づきそうだと感じている製品ジャンルは「エージェントロボット」です。

エージェントロボットというのは、人間が日々の生活をする上で、アシスタントとか秘書になってくれるロボットのことです。

『スターウォーズ』でたとえればR2D2やC3POでしょうかね。

「そんなロボットが家庭に入ってくる未来なんてもっと先では?」と思った人もいることでしょう。

しかし、「そうしたロボット」は今年から続々家庭に入り始めています。

いや、正確には形状は手足の付いたロボットではなく、現在、普及し始めているのは「AI搭載スピーカー」のスタイルが主流ですけれども。

いずれ、回を改めてお話したいと思いますが、このジャンルの製品は、エージェントロボットにつながっていくと思っていまして、来年のCEATECでは、このタイプ製品が手を変え品を変え、で出てくるのではないかと思っているのです。

果たしてどうなるか。来年のCEATEC2018のレポートで答え合わせをしたいと思っています。

バンダイナムコブースにあった「ガンシェルジュ ハロ」はガンダムのうんちくについて語れるだけでなく、目覚まし機能、ワイヤレススピーカー機能も搭載し、「Apple HomePod」「Google Home」「Amazon Echo」に代表されるスマートスピーカー的な機能も有する。将来的には家電制御のようなエージェント機能も搭載していきたいとのことで、こうしたキャラクター玩具からエージェントロボットを普及させる道を探っているようにも思える。「ガンシェルジュ ハロ」は意外にも戦略的な商品として開発されているのかもしれない!?