[黒川文雄のゲーム非武装地帯] 第48回: テクノロジーとナレッジの均質化が生み出すコンテンツ

第45代アメリカ合衆国大統領であるドナルド・トランプのアジア歴訪の一環としての訪日(11月5日~7日)が終わって、日本は落ち着きを取り戻した。在日アメリカ軍、横田基地にエアフォースワンで飛来、専用ヘリコプターのマリーン1でゴルフ場に移動して安倍総理、松山秀樹プロとゴルフ、さらに夜は大統領専用車ビーストで銀座へ移動し会食というスケジュール。安倍総理、日本政府としては最大限の歓待をアピールしたことだろう。北朝鮮を取り巻くアジア各国の連携が求められる今、日本とアメリカ、さらには韓国、中国との関係強化のための水面下の駆け引きがあったと思われる。

想起したキーワード:Occupied Japan

あくまでも個人的な印象だが、今回のトランプ大統領訪日を見ていて思い出したことがある。それは「Occupied Japan(オキュパイドジャパン)」というワードだ。

言葉のとおり、「占領された日本」という意味。これは1947年から1952年までの間、日本からの輸出製品に刻印されたものを総称しており、正確には「Made in Occupied Japan」、つまり「この製品は占領下の日本で製造されたもの」という意味である。

しかし、日本は、今もアメリカの強力な支配下にあることは間違いない。それゆえに、ある種の守られた国としての尊厳を維持できているのではないだろうか。

戦後、日本が焦土から大きく飛躍できたのは、1つにはアメリカの戦後復興への後押し、さらにはそれに伴う製造業の活性化と貿易促進に由来するのではないだろうか。それがイコール「Occupied Japan」に象徴されるのではないだろうか。

また、日本はもともと物資や原材料がない国だったため、他国からそれらを調達してそれらを「加工貿易」と称して、原材料を加工して製品化して他国へ輸出することで成長した経緯もある。

そして、戦後数十年の中で日本を代表する産業や製品が生まれた。ソニー、松下電器(現:パナソニック)、ニコンなどがそれらを示す象徴といってもいいだろう。

一方、コンテンツの世界はどうだろうか。ハリウッド映画がその1つの移り変わりを見るには好例だと思う。

かつて、1950~70年代のハリウッドの映画産業を支えたのは「オイルマネー」。80年代に入ると日本の松下やソニーが映画会社を手中に納め話題になった。

しかし、2000年に入るとルパート・マードック率いるニューズコーポレーションなどメディアグループがそれらを席巻した。コンテンツ産業は金がかかる分、その時代ごとに金のある産業が支援するという暗黙の図式がある。

国境を超えるテクノロジーとナレッジの均質化

そして今、何が起こっているかといえば、中国マネーが大きく流入している。アリババなどの大手企業の金が、中国を1つの単位として捉えるよりも、世界規模でのエンターテインメントとしてそれぞれのコンテンツを捉えて展開している点は見習うべきポイントだと思う。

時代が変わればコンテンツ、メディア、それに伴う潮流も大きく変化をしていくことは歴史が証明してくれる。そして、それらを加速する要素が、インターネットの普及、デバイスの進化によるナレッジの共有化と均一化、時間の短縮である。

生まれたときに何もなかった世代と、生まれたときにはスマートフォンがある世代の感性の違いといえばもっとわかりやすいだろう。

コンテンツの世界では、中国ではクリエイティブな発想がまだ未成熟だから、単純なゲーム開発、イラスト制作やアイテム制作には向いているといわれ続けていた。ゆえに最も重要なコンテンツのクリエイティブに関しては、あと10年くらい日本は優位性があるという感覚で捉えていた関係者も多いことだろう。

しかし、このところ、日本からのテイストやナレッジをじゅうぶんに反映し、そこにオリジナリティを反映したコンテンツが導入され始めた。その好例はプレイヤーからも支持を受けている『アズールレーン』。

今のところは、中国発の新しさもあって受け入れられているという見方もできなくはないが、かつて日本が加工貿易が主たる産業といわれていた時期を経て、我々の先輩たちが戦後時間を掛けて、独自の技術を磨き、さらにはそこに感性と言う付加価値を生み出した日本の工業界、コンテンツ産業として発展したことを考えれば、『アズールレーン』がスタンダードなコンテンツとして、フォロワー的なコンテンツが出てくると思われる。

さらに、先に述べたナレッジの均一化が促進され、もっと良質なコンテンツが続々とローンチされると思われる。

日本が守られた国でいられるのも時間の問題かも知れない……。テクノロジーとナレッジの均質化は国境を超える。

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