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【ジェーニャにおまかせ!】声優ジェーニャに聞くロシアのスマホゲーム事情(後編)

日本で活躍するただ1人のロシア人声優ジェーニャさんに、ロシアならではのスマホゲーム事情を聞くインタビュー企画の後編。刑務所の中で自分の地位を上げていく一風変わったゲームや、現地のモバイル通信の環境など、スマホゲームを取り巻くさまざまな話題が飛び出した!

前編の記事はこちら

日本とロシアで異なるゲーム事情とは?

――ほかの国にはない、ロシアならではのゲームってありますか?

ジェーニャさん(以下、ジェーニャ):遊んだことはないのですが、私がロシアらしいなと思ったのは刑務所が舞台のゲームです。自分が刑務所に収監されて、下っ端からのし上がっていくゲームなんです。刑務所から脱出するゲームではなく、刑務所の中で偉くなって地位を築いていくんですよ(笑)。ロシアにしかありえないゲームだと思います。

――日本では考えにくいですね(笑)。

ジェーニャ:日本語に翻訳しにくいのですが、ロシアには「泥棒を繰り返して役職につく」という言葉があります。ロシアは治安が悪いので、刑務所の中で偉くなるというのは1つのステータスなのかもしれません。しかもこのゲーム、説明文が刑務所っぽいスラングで書かれているので、私にも意味がわかりません(笑)。そんなゲームがランキングのTOP 20に入っているんです。

『法の泥棒』というような意味を持つこのタイトル。囚人たちのボスを目指すという、かなり変わったテーマの作品だが、日本で例えるなら『太閤立志伝』のような内容なのだろうか?

――国が違うと事情が異なりますね。興味深いです!

ジェーニャ:他にランクインしているのは、世界的にはやっている箱庭育成ゲームや、パズル系などです。「萌えゲー」はいっさいありませんでした。

――ハードウェアについてもうかがいたいのですが、ロシアでは自国で開発されたスマホはありますか?

ジェーニャ:あります! 新興企業が開発したスマホなんですが、「本が読みやすい」ことをウリにしているスマホ「Yotaphone」です。ロシア人は本を読むのが大好きだから、こういう商品が生まれるのかもしれません。

――あまり変わった特徴はないように見えますが……?

ジェーニャ:キャッチコピーに「読書のためのスマホ」と書いてありますが、いちばんの特徴はバックパネルがセカンドスクリーンになっていて、時刻とか天気予報とかの情報が常に表示されているところです。このスクリーンは電子インクなので、バッテリーが切れても消えません。ちょっとマニアックで、日本人も好きそうです。

――これはちょっとほしいかも……。ロシアで一般的なスマホはiPhoneですか?

ジェーニャ:いえ、iPhoneは高価なので「かっこつけてる人」のスマホです(笑)。お金持ちのイメージですね。一般的なのはサムスンやLGのAndroid端末です。

ロシア人は電話でのおしゃべりが大好き

――ロシアのネット環境について伺います。日本と比べていかがですか?

ジェーニャ:この5年くらいでかなり発達しました。屋内でも屋外でもWi-Fiが飛んでいます。日本で使っているiPhoneを持って行ったら、そのままどこでもネットが使えました。ですが、最近1年くらいでヘンな法律ができたんです。

――どんな法律ですか?

ジェーニャ:Wi-Fiにアクセスするとき、ロシアの電話番号を求められるようになったんです。誰がログインしているかを把握するためなのでしょうが、私はロシアの電話番号を持っていないので、入れなくなってしまいました。

――旅行者は困りますね。では、モバイルデータ通信は?

ジェーニャ:日本みたいにLTEが普及していないので、モバイル通信は遅いです。それに、ロシアは日本人と違って電話で直接話すのが大好きなんです。いつでもどこでも、場所を選ばずに電話でしゃべっています。

――メールは使わないのですか?

ジェーニャ:使わないこともないのですが、あまりしません。ちょっとした確認でも、いちいち電話をかけてきます(笑)。なので、通話のトラフィックはかなりたくさん用意されていると思います。

――『LINE』のような便利なコミュニケーションアプリはありませんか?

ジェーニャ:私の友だちは『WhatsApp』を使っていました。その他では、ロシアでは『VK(ヴィーケイ)』が有名です。あとはアメリカではやったブログシステムの『LiveJournal』がロシアでも人気でした。ロシア人はだいたい文学の教育を受けているので、文章を書くのが好きなんです。

――ロシア文学は世界的に有名ですね。

ジェーニャ:はい。そんな影響もあって、ロシア人はブログなどに軽い日記などを書くのではなく、論文みたいな文章やちゃんとしたコラムなど、しっかり考えて書くんです。日本だとツイッターがはやっていますよね? ロシア人にとっては、アレでは物足りないんです。日本は俳句文化を持っているので、140文字以内に伝えたい内容を収めるのが美しい。でもロシアは違います。両国を知ると、文化の違いって面白いですよ。

日本で大ブレイク中の『スクフェス』や『パズドラ』はロシアではやるか?

――文化の違いを伺ったので聞きたいのですが、今ジェーニャさんがハマっている『スクフェス』は、ロシアでウケると思いますか?

ジェーニャ:わからないですね。音ゲー自体は私がロシアで暮らしていた10年前からありましたけど。ロシアに限ったことではないと思いますが、日本と違って気軽に課金ができません。私は子供向けの絵本や童話のアプリのローカライズ(翻訳と声を担当)をしたこともありますが、海外だと国によって一切課金してくれないこともあるんです。

日本語版は両親が子供のために課金して遊ばせてくれます。ですが、海外だとダウンロード数はものすごく多いのに、課金はしてもらえません。課金したくてもお金がないとか、いろいろな事情があります。その点、日本は恵まれていると思います。ゲームをローカライズする場合には、その国の状況に合わせて設計しないといけないと思います。

――なるほど。「かわいい」だけではヒットしないということですね。

ジェーニャ:でも私の本心としては、『スクフェス』くらいは遊んでほしいなって思います(笑)。

――その他に、ロシアではやりそうな日本のタイトルはありますか?

ジェーニャ:ロシア人はパズルが好きなので、『パズドラ』ははやると思います。難しくなった今のバージョンではなくて、サービス開始当初の簡単なバージョンなら(笑)。

――日本のゲームをロシアで流行らせるためには、どうしたらよいと思いますか?

ジェーニャ:かなり大掛かりなプロモーションが必要だと思います。文化が違うし、求められていることも違いますから。

――RPGなどはどうでしょう。例えば『ファイナルファンタジー』シリーズははやりましたか?

ジェーニャ:はい。『FF』は万人受けしやすいキャラクターデザインや美しい音楽など、わかりやすいゲームだったからだと思います。スマホゲームの話からは脱線してしまいますが、植松伸夫さんもかかわっている、ゲーム音楽をオーケストラで演奏する「Game Symphony Japan」というコンサートを日本でやっているのですが、去年と今年、私はロシアの4つの都市で司会と歌手をしてきました。植松伸夫さんも出演しました。その都市の1つ「チェリャビンスク」では任天堂のファンがとても多く、コンサートは満席で、すごく盛り上がりました。

――ロシアのゲームミュージックファンにはたまらないですね。

ジェーニャ:ゲームミュージックに興味がある人、純粋にオーケストラに興味がある人、どちらも楽しめるコンサートでした。そもそも私がこのコンサートにかかわらせていただくようになったのは、プロデューサー兼指揮者の志村健一さんが声をかけてくださったからなんです。私は日本とロシアの架け橋になりたいとずっと思い続けてきたので、よろこんで協力させていただきました。

チェリャビンスクは「隕石が落ちた街」としては有名ですが、実はすごくレベルの高いオーケストラがあるということがあまり知られていません。なので、私は少しでもロシアの情報を日本に伝えたいんです。国同士があまり仲よくできていない分、私たちがどこまでつなげられるかにチャレンジしたいと思っています。私は声優なので「キャラクターを演じたい」とか「歌いたい」といった夢はありますが、それとは別に「日露の架け橋になる」ことも夢の1つなんです。

――それはジェーニャさんにしかできないと思います。

ジェーニャ:私はロシアで暮らしていた18年前に『美少女戦士セーラームーン』が大好きになってから個人サイトを立ち上げ、ずっと日本のアニメやゲームばかりを追いかけてきました。昔からアニメやゲームが好きなロシア人のオタクだけど、大人になったいまだからこそ、自分が好きなものを使って日本とロシアをつなげていきたいと考えています。

(C) Elizaveta Ivanova
(C) 2010—2015, Yota Devices. Все права защищены.