Dead Effect 2【ゲームレビュー】

チェコ共和国のゲームスタジオBadFly Interactiveが開発した『Dead Effect 2』は、家庭用ゲーム機向けのタイトルに勝るとも劣らない品質を誇る一線級のSFホラーアクションだ。ゲームシステムとしてRPG的な要素も盛り込まれており、プレイヤーは3人のメインキャラクターから1人を選び、さまざまな人工パーツを身体に埋め込みながら、より強力な戦闘力を身に付けていく。

必要な要素はすべて盛り込まれた鉄板のSFホラーアクション

子どものころに何が楽しいのかよくわからなかったものの1つに、ジェットコースターに乗ることと、ホラー映画を見るというのがあった。しかし、大人になってみれば、どちらも好きな人がいることが何となく理解できるようになった。とはいえ、自分が別段好きになるわけでもないので、相変わらず苦手のままだ。

ジェットコースターは、彼女ができるくらいの年齢になれば乗る機会もできるだろうし、やせ我慢して乗っていればおのずと慣れていくものである。ここら辺は、食べ物の好き嫌いと同じだろう。ところがどっこい、ホラーは慣れるタイミングがなくて、そのまま中年になってしまった……。懸命な読者なら、この先の展開が読めるのではないかと思う。

「ゾンビ原理主義者」にいわせれば、走るゾンビは反則だそうだ。……確かに反則だ。怖さが倍増するじゃないか!

閉じ込められた空間+ゾンビという王道

ゲームの舞台は星間移民宇宙船。なんかいろいろあって、船内でゾンビが繁殖してしまったらしい。ここら辺のストーリーのうすぼんやりした感じは、つたない英語力のせいだとご理解いただきたい(ゲームは全編が英語だが、プレイすること自体には問題ない)。

周りが宇宙空間の閉鎖された空間でそんな事態になったら、逃げたくてくても逃げようがない。仕方がないからゾンビを倒さないといけない、と。そんなわけで、ゾンビを排除しつつ生存者のところに向かうわけだ。

ここらあたりで、何とも懐かしい既視感をいくつも覚えた。宇宙船の中で敵対生命体と戦うというのはリドリー・スコットの映画『エイリアン』を彷彿とさせるし、閉鎖空間+ゾンビは、まさしく『バイオハザード』である。ホラーとしてはもう教科書通りというか、最も効果的な組み合わせなのは言うまでもない。さらに本作は、かなり高精細なグラフィックが売りになっている。恐怖のお膳立てはすべてそろっている状態だ。

プレイヤーが目覚めるところから物語が始まるのは、人気FPSシリーズの『HALO』を思い起こさせる

プレイヤーキャラクターは3人から選択可能。それぞれ、武器の性能や装備品が異なっている。初心者におすすめなのは重火器使いの「GUNNAR」だ

画面が目に近いことから生まれる恐怖

さて、船内を探索してればゾンビが出てくるわけで。奴らに遭遇する前には、ちゃんと銃が使えるようになってのだが、これがまぁ当たらない(照準を合わせるだけのオート射撃だ)。単純に筆者の腕が悪いだけだが、バケモノが走ってこっちに向かってくる状況で落ち着いて撃てるわけがない。映画なんかでは、ここぞというところでしくじるさまを見て「もっと落ち着け」とか思っていたが、すまん。落ち着けないわ……。

ちなみに、なんでそんなにビックリしてしまうのかを分析してみたが、おそらく画面が自分の目に近いせいではないかと愚考する。家庭用ゲーム機向けのホラーゲームの場合、画面との距離がそれなりにあって、かつパッドで操作するが、スマホゲームの場合は画面が目に近く、さらに画面に直接触っているわけだ。これが、ことのほか怖さを増幅する。

そもそも、人間は何かが迫ってきたら本能的に手で払うわけだが、スマホゲームの場合は手で払うとゲーム画面もいっしょに移動してしまう。それゆえ、この本能的な行動を抑制しようとして、画面を動かないように固定すると、あまり経験したことのないストレスを感じてしまうことになる。恐怖の質としてはかなり新鮮な体験である。そして冷静に書いてはいるが、初めて敵を見たときにチビりそうになったのはここだけの話である。

引きつけて撃つことを推奨しているのだと思うのだが、射撃は任意で行えない。というか、サイトにターゲットが入ると勝手に射撃を行う。かくして、当たらない→弾切れになる→リロード中にかみつかれるという、情けない流れが完成してしまうわけだ

軽いパニックから生じる情報遮断

あくまで個人的な意見であり、肝が据わっていて英語が得意な方ならそんなこともないのかもしれないが、ゾンビに襲われている最中にもオペレーターからの情報は音声で入り続ける。そもそも筆者は英語のヒアリングがあやしい上に、パニックになっているので、何をいってるかさっぱりわからないし、頭に入ってこない。日本語で言われたとしても理解できるか微妙な状態なので、英語ならなおさらだ。

かくして、何ら情報が増えないままに先に進まねばならない不安感と心細さは、ちょっと経験したことがない感覚だった。逆にいえば、落ち着いて状況を理解できれば、本作はホラーアクションではなく、SFアクションに姿を変えることになる。遊ぶ側の素養でゲームの性質が変わるというのはなかなか面白い。

次にやらねばならないことは、画面上部に常に表示されている。英語のヒアリングができなくても、これのおかげでなんとかなるはずだ

パズル的なギミックの面白さ

宇宙船内を探索するに当たり、さまざまなギミックを駆使して進まねばならない。例えば、船内の装置をいじってジェネレーターの波形を合わせるとか。そういったパズル的な部分は、パズル好きとしてとても楽しめた。序盤だけかもしれないが、パズル解いているうちはゾンビも襲ってこない安心感がある。また各ギミックは直感的に操作できるので、英語がわからなくても解く分には問題がない。

ホラー要素におっかなびっくりだったが、ゲームのできとしては大変優秀で、進むべき先が随時アイコンで指示されるなど、ゲームの進行に迷うことはなかった。極論をいえば、英語ができなくても進行する分には何とかなる。もちろん、その場合はストーリーの詳細は分からず、少々残念なことになるだろうが。

例えばこの回路図は、合計値が54になるように組み合わせればいい。パズルを間違ったとしてもペナルティーがあるわけではないので、説明書きがわからなくても適当にいじっていれば何とかなる

この原稿を依頼されたとき、朝の9時くらいに担当編集者から電話をいただいたのだが、その内容が「オール英語でローカライズされていないタイトルですがよろしいですか?」というものだった。寝ぼけていたので「多分大丈夫です」と返したのだが、聞くべきは英語か否かではなく、ホラーかそうじゃないか、だったのだ。

ここまで書いてきたことを読んだ方でホラーが苦手だという自覚があれば、わざわざ遊ぶことはないと思うのだが、何かの気の迷いでインストールしてしまったら、悪いことはいわないからアンインストールした方がいい。絶対に後悔するから。

怖さマシマシで行きたいという強者には、3番目のキャラクターとして用意されている「KAY」でのプレイをおすすめする。彼はメインウェポンが日本刀で、弾数に制限がない代わりに接近戦しかできない。周りを敵に囲まれると、かなり絶望的である

  • 使用した端末機種:iPhone 6 Plus
  • OSのバージョン:iOS 9.0.2
  • プレイ時間:約5時間
  • 記事作成時のゲームのバージョン:1.00
  • 課金総額:0円

(C) 2015 BadFly Interactive, a.s.