【西川善司のモバイルテックアラカルト】第37回: ゲーム機の実況配信デバイス「AVT-C878」を活用する(後編)

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前回から引き続き、AverMediaの実況生音声吹き込み対応、PC接続および単体運用両対応のHDMI録画機、「AVT-C878」の活用編をお届けしたいと思います。前回は、実際の接続方針や使い方の基本的な事を解説しましたが、今回はもう少し高度な、応用編という感じの内容です。といっても、応用編の入口という感じで、かくいうボクも今回の活用スタイルをはじめて時間が経っていませんから、説明する内容は基本的な情報が中心になります。

AVT-C878を配信ソフト「OBS Studio」で使ってみる

AVT-C878の商品セットには「RECentral 3」というコンパニオンソフトが付属しています(実際には、公式サイトから最新版をダウンロードして利用しますが)。

このソフトは、ごく基本的な使い方をする場合には必要十分な機能が備わっているのですが、互換性に関して、まだ難があるように思えました。

というのも、ボクの実況動画配信用のWindows PCは、ちょい古なAMDのFX-8350プロセッサベースのもののためか、RECentral 3では動作が安定しない局面がしばしばありました。

具体的には、実況配信を行っていると勝手にRECentral 3が終了してしまうことがあったからです。

AVT-C878の標準ソフト「RECentral 3」。最初からニコニコ生放送に対応しているのが特徴

この際「プラットフォームを刷新させるか……」みたいなことも考えたのですが、普段は問題なく使えているPCですから、思いとどまり、別の方策を選択しました。

それは、汎用の配信ソフトを活用する方針です。

今回の記事は、AVerMediaとのタイアップではありませんし、今後、別メーカーのHDMI録画機に乗り換えた時にも、汎用ソフトの方が潰しが効きますからね。

ということで、ボクが選択したのは、実況動画配信の世界的ではデファクトスタンダード的な存在の「Open Broadcaster Software」。通称OBS Studioです。

64bit版Windowsに対応しているだけでなく、Mac OSX、Linuxにも対応しています。

OBS Studioは、世界中の有志の間で仕様検討が行われ続け、日々進化している動画配信スタジオソフトで、ちゃんと日本語にも対応しています。

対応配信サービスは、YouTubeライブストリーミング、Facebook Live、Beam Pro、DailyMotion、Twitch、Hitbox.tvなど、主要ビデオ配信サービスに対応しています。

日本で人気のニコニコ生放送は、専用プラグインを利用することで対応します。

このプラグインの利用にはそれなりの知識が必要なので、もしニコニコ生放送での配信を大前提としているならば、最初からニコニコ生放送に対応しているRECentral 3を活用した方が無難かと思います。

OBS Studioは公式サイトから無料でダウンロードしてインストールすることができます。

Windows7以上の64ビット版Windowsに対応していて、日本語環境だからといって特別な設定もせずに、簡単にインストール可能です。

実際の接続は?~マイク付きヘッドフォンも用意しよう

OBS Studioを活用する前に、AVT-C878側の接続を確認しておきます。AVT-C878の接続は、実況音声を吹き込む場合には、下記の形態で接続します。

ネット配信を行う場合、AVT-C878はこのような接続スタイルにて、いわゆるPCモードで利用することになる。単体録画モードとPCモードとの違いは前回を参照のこと。図中の「ゲーム機」の部分は、スマホのゲームの実況を行う場合は「スマホ」に置き換わるイメージ

実況の生音声は、PC側でミキシングするのもいいのですが、AVT-C878で簡単に合成してくれるので、ボクはヘッドセット(ヘッドフォン付きマイク)をAVT-C878のヘッドセット用入力端子側に接続しています。

筆者の配信スタイルでは実況音声用ヘッドセットの接続先はPC側でなくAVT-C878側を選択している

ただ、AVT-C878に接続できるヘッドセットは、φ3.5mmの4極ミニジャック仕様のものに限られます。USB接続タイプのものは利用できません。

ボクは価格重視で、Beexcellent ゲーミングヘッドセット「GM1」を購入して使っています。

適当に選んで買ったマイク付きヘッドフォン。φ3.5mmの4極ミニジャック対応でわずか2,000円ちょっと

このGM1、かなり安価な製品ですがマイクのオン/オフ切り換えスイッチも付いてますし、音量の上げ下げにも対応していて、機能は及第点に達しています。

質感は、高級品と比較すればまだまだといった感じですが、約2,000円という価格を考えればコストパフォーマンスは悪くないと思います。

「実況動画配信を試しにやってみたい」という、ボクみたいな人には分相応な製品だとは思いました(笑)。

接続する機器をすべて接続して、ホストPCとUSBケーブルで接続したら、OBS Studioを起動します。

実際の接続の様子

OBS Studioの設定(1)~AVT-C878の登録

OBS Studioを起動して、見慣れぬ画面にビビってしまいそうですが、基本的な使い方をする場合に限ってはいじるメニューは必要最低限です。

OBS Studioのメイン画面

まず、いじることになるのは「ソース」項目です。ここの「+」ボタンを押して、AVT-C878をOBS Studioから利用できるように追加してやります。

「+」を押すと、名称を選択させるメニューが出てきますが、ここは何でもよく、ここでは「映像キャプチャデバイス」を選びます。

「ソース」欄の「+」ボタンを押してAVT-C878を登録する際に、機器名称の選択を迫られるが、ここは適当でOK。OBS Studioは実況者自身を映し出すWebカメラなども接続できるので、複数の映像キャプチャデバイスを接続する際にはどんどん「+」で登録していくことになる。本稿ではAVT-C878を登録するだけである

「+」を押すと開く画面がこちら。「OK」を押せばよい

すると、「映像キャプチャデバイス」のプロパティが出てくるので、順次設定していきます。

「デバイス」項目には、現在、ホストPCに接続されているビデオキャプチャデバイスの一覧が表示されます。

AVT-C878を接続している場合は「AVerMedia LGP2 Stream Engine – 1」と「Live Gamer Portable 2」の2つが列んでいるかもしれません。

ちなみに、両方ともAVT-C878をいい表すものなのですが、2つ見えているのは、ドライバが2つインストールされているためです。

前者のAVerMedia LGP2 Stream Engine – 1は、RECentral 3をインストールすると組み込まれるドライバで、こちらの方がホストPC側の表示映像の遅延を少なくできる特性があります。

結論からいえば、ここはどちらを選択してもよく、動作安定性が高いと感じた方を適当に選べばいいと思います。

ボクは、前者のAVerMedia LGP2 Stream Engine – 1を選択して使っています。

接続されている映像キャプチャデバイスを実際に選択。AVT-C878接続時には2つのデバイスが見えることがある。ちなみに「LGP2」「Live Gamer Portable 2」とは、AVT-C878の別名愛称である

この画面の下の方には、AVT-C878から何をキャプチャするかの設定を行うための項目が広がっていますので、スクロールしていきましょう。

解像度、フレームレート、映像フォーマット、色空間などは、ネットワーク環境や好みに応じて適当に設定してください。

なお、「音声出力モード」の項目は「音声のみをキャプチャ」を選択します。というのも、今回の事例では、実況生音声をAVT-C878側で吹き込んでしまっているためです。

PC側のサウンドシステムからの音声(例えばメールの着信音)などは配信したくないですから、AVT-C878からの音声だけをキャプチャする……という意味合いで「音声のみをキャプチャ」を選択しています。

PC側の音声をあえて入れたいという場合には、別設定を選択してもいいかもしれません。

AVT-C878に対する設定はこれだけです。

映像解像度やフレームレートを選択。また、どの音声をキャプチャするのかも決定する

OBS Studioの設定(2)~配信の設定

続いて、配信の設定を行います。ここは、実際に動画配信サービス側のサーバーとOBS Studioが通信を行うための重要な設定となるので、慎重に行う必要があります。

といっても、OBS Studioがよくできているので、難度はそれほど高くはありません。

メイン画面の右の「設定」を押して、「配信」設定を選択します。ここで、利用する配信種別やサービスを選択していきます。

「配信」設定画面。ここで、どの動画配信サービスを利用するかを選択し、配信の際に必要な各種情報を入力していく

ボクはYouTubeライブストリーミングを選択肢しました。

サーバーは通常は「Primary」を選択します。ここの設定で最重要なのは「ストリームキー」の設定です。

このストリームキーとはなにかというと、簡単にいえば「OBS Studioのような配信ソフトと、YouTubeの配信サーバーが通信をするために用いるパスワード」のようなものです。

といっても、これはユーザーが決めるものではなく、YouTubeのサーバー側で決められるもので、YouTubeのアカウントごとに一意的に決定されて示されます。

これを取得するためには、当たり前ですが、YouTubeのアカウントが必要です。

YouTubeのアカウントの作り方はここで説明するまでもないと思うので省略しますが、ストリームキーの取得方法は簡単に説明しておきます。

YouTubeにマイアカウントでログインし、設定画面から「クリエイターツール」を選択してこのメニューリストの中にある「ライブストリーミング」を選択しましょう。

ライブストリーミングの設定画面が出てくるので、この画面の最下段付近にある「エンコーダの設定」に着目します。

ここに「ストリーム名/キー」という項目があり、「●●●●……」と伏せ字になっているのが見えるはずです。

横にある[表示]ボタンを押すと、パスワードっぽい文字列が表示されるので、これを前出のOBS Studioの「ストリームキー」の設定枠にコピー&ペーストします。

ここの設定はこれだけです。

WebブラウザでYouTubeにログインし、アカウント設定の「クリエイターツール」から、「ライブストリーミング」を選択。続いて出てきた画面の最下部付近にある「エンコーダの設定」欄をチェック。ここにある「ストリーム名/キー」が、OBS Studioで設定すべき「ストリームキー」

配信映像音声の品質設定

続いて、配信する映像や音声の品質を設定してやります。

これは、OBS Studioの「設定」メニューの「出力」設定から行います。いわゆる配信ビットレートなどの設定ですね。

ここは映像解像度、音声分解能と深い関係性にありますし、ネットワーク環境にも配慮して設定を決める必要があります。

ボクの自宅は光回線の100Mbps契約なので、フルHD(1920×1080ピクセル)映像を10Mbpsで、音声は128kBpsと設定しています。

ここは、自ら経験を積んでいったり、あるいは先人の知識をお裾分けしてもらって適切な設定を探ってみてください。

実際にどのような設定で配信するかを決定するのがここの「出力」設定

設定の際に特に留意しておきたいのは「エンコーダ」の設定です。

各ユーザーのPC環境によって異なりますが「x246」が選べて、もしかすると「NVENC」も選べるかも知れません。

映像や音声はネットワーク上に配信出力する前段階で圧縮される(エンコードされる)のですが、そのプロセスをどう行うかの設定がここなのです。

x246は負荷の高いエンコード処理をCPUだけで行うものです。いわゆるソフトウェアエンコーダというヤツですね。

NVENCは、NVIDIA製のGPU(GeForce)がPCに搭載されている場合に限り利用できるもので、GPU内蔵のハードウェアビデオエンコーダを使ってこの処理を行います。

消費電力やシステム負荷を低く抑えるにはこちらがお勧めです。

OBS Studioを動かしている同じPC上で3Dゲームを動かしたり……ということをするのでなければx246を設定しても、特に大きな問題はないと思います。

もちろん、CPU性能がとても低い場合にはコマ落ちなどをしてしまいます。そうなった場合はPCを買い替えるか、外付けGPUの搭載を考えましょう(笑)。

いざ、実際に実況を行ってみる

設定はこれだけです。

あとは、[配信開始]ボタンを押すだけで、実況動画の配信が行えます。

OBS Studioでは[録画開始]を押すことで、配信している映像を、そのPC自身に録画することもできます。

元映像を残しておきたい場合などには同時に[録画開始]ボタンを押すのもありです。

また、最初のころは、ちゃんと映像や音声が想定通りでているかを確認する意味合いから、一度、録画を行って、その動画で品質をチェックするのも良いと思います。

さて、今回、OBS Studioを使い、Android端末の映像に対して実況を添える試みに挑戦してみました。

接続イメージ。スマホからMHLアダプタを介してHDMI出力し、これをAVT-C878に接続。ただ、Android端末はHDCPが有効化されているのでテレビには映せても録画はできない。iOS端末は、AVT-C878をHDCP無視設定すれば録画可能

まず、調べて見たところ、近年のAndroid端末はすべてHDCPが有効化されているそうで、これではAVT-C878での録画は行えません。

iOSデバイスに関しては、AVT-C878の標準添付ソフトの「RECentral3」の設定メニューから「HDCP検出機能」の設定をオフとすることで、録画をすることができます。

これについて、Android端末でも試してみましたが効きませんでした。

近年のAndroid端末はすべてHDCPが適用されているので、AVT-C8782入力するとこのような警告画面が出てしまって録画はできない

iOSデバイスに関してはAVT-C878の付属ソフト「RECentral3」の設定画面の画面最下段「HDCP検出機能」の設定を操作することでHDCPを無効化することができる

結局、今回のAndroid端末の実況動画では、特殊な装置を使い、HDCPを無効化させたうえで作成しています。

それと、今回、AVT-C878のマイク音声入力端子のせいなのか、マイク付きヘッドセットのマイク音質の問題なのかは不明ですが、キーというヒスノイズが入ってしまう現象に気が付きました。

これは、OBS Studioに搭載されている標準機能ののノイズ低減機能を使うことで、かなりいい具合に抑えることができました。

これはおすすめです。多少、メイン音声の輪郭が丸くなったような印象を受けますが、ノイズがあるよりは全然マシで聞きやすいです。同様の問題が発症したときには試してみてください。

音声入力(マイク)の設定画面から「フィルタ」を選択して、「ノイズ抑制」を追加するだけでOK。設定はデフォルトの「-30dB」で問題なし

というわけで、上が今回、製作した実況動画です。

本当に、OBS StudioとAVT-C878を組み合わせて一発録りで作ったものなので稚拙ですみませんが、「このくらいのことができるのか」という目安にはなっているかと思います。

内容はあまり面白くないかもしれませんが(笑)、スマホの画面に対して実況したのは初めてだったので、ボク自身は結構新鮮で楽しかったです。

さて、最初は、機材を使うための試験運用的な感じで4月くらいからゲームプレイ実況を始めたボクですが、ゲームプレイ中に、視聴者の方たちから、ツッコミをうけたり、ゲームに対する攻略法のチャットメッセージをうけたりするようになってから、純粋に実況が楽しくなってしまいました。

なんというか、テレビの前に仲間達と座ってワイワイ語り合いながらゲームをプレイしている感覚に近いんですね。

そんなわけで、最近は、ゲームをプレイする際にかなりの高確率でオンライン実況するようになっています。

「YouTuberになって有名になりたい/お金が稼ぎたい」と思っているような人でなくても、「新しいインターネットを介した遊び」として実況動画に取り組むのは面白い……。

今では、ボクはそんな感じ方をしています。興味が出てきた人はぜひとも挑戦してみてください。

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