[黒川文雄のゲーム非武装地帯] 第36回: 苦難の船出?新作タップゲームは新しい大地を見れるか!?

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日々、膨大な数のアプリがストアにローンチされる。それらのすべてをチェックし、インストールして、プレイもしくは、使ってみることは不可能だろう。アプリの海は広く、深く、透明度もさほどよくはない、その海の中で自分の好みに合うコンテンツを探すことは簡単ではなくなってきている。

たとえば、知っている会社(仕事で関連している会社)が開発したものや、オリジナルが好きだった作品のリメイク、もしくはよく知っているクリエイターが開発に関わったものは積極的にダウンロード・インストールしてプレイするようにしている。

つまり、アプリの大海原の中で、ブイや灯台のような目印のあるコンテンツがそれにあたる。

このところ、それらのコンテンツが導入されたので、今回はそのコンテンツにフォーカスしてみたいと思う。

LINE アキンド星のリトル・ペソ

かつて、私はNHN Japanに所属していたが、そのときにいっしょの職場で働いた馬場一明(ばばかずあき)氏が中心になって開発したコンテンツが『LINE アキンド星のリトル・ペソ』だ。

馬場氏は、NHN Japan(現在のNHN Playart+LINE)に所属していた当時はPCベースでのゲーム開発を指揮、その後は社内でスマートフォン向けのゲーム開発を推進した先駆者。しかし、残念ながら、2015年の夏ごろに惜しまれながらも退職した。

その後、同年の10月7日、イマジニアの支援を受けて、共同で立ち上げた会社が「SoWhat(ソーホワット)」である。

ちなみに、私の記憶が正しければ、10月1日にイマジニアが出資してSoWhatが創業するというプレスリリースが世に出たときに、イマジニア株式(証券番号4644)はストップ高になった。

おそらく、スマホ系コンテンツでヒット作品に乏しいイマジニアが、スマホでゲーム開発をする子会社を創業するという投資家の期待値が大きく株価としてブレークしたものと判断していいだろう。

私が創業後に馬場氏のオフィスを訪問した際は、メンバーは4名ほどだったが、その後徐々にメンバーが増え、開発力、運営力の強化が成されたと聞く。

その組み合わせに期待値は高まった

さらに、2017年1月19日には、SoWhatがLINE(証券番号3938)と共同でスマホゲーム『LINE  アキンド星のリトル・ペソ』を導入することを発表した際にもストップ高を記録したと記憶している。

「イマジア+スマホゲーム+馬場氏+LINE=大成功」という目論見が、そのストップ高を生んだといってもよいだろう。誰が呼んだかはわからないが、元NHNのメンバーたちからは馬場氏は「ストップ高男」と呼ばれたという。

そして、アニメも同時に放送導入することも発表したため、事前登録は100万人を超えた。個人的にはキャラクターの可愛さや世界観のイメージ、アニメ、ゲームの導入パート、シンプルな操作性などはとてもよくできていると思っている。

実は入稿間近に、馬場氏からメッセージをもらうことができたが、残念ながら導入におけるインストール実数や、導入後のコンテンツの稼働状況はやや厳しいとのこと……。しかし、馬場氏としてはあきらめることなく、改善を施して行きたいと語ってくれたことが印象的だ。

すでに大きな変更を施すことは難しい段階にあるが、馬場氏が他メディアのインタビュー取材でいっていたような「デジタルトイ」的な横展開や、キャラクターグッズとしての展開も期待できるコンテンツである。生きの長いコンテンツとして育ててほしいと思っている。

Yahoo!の大きな期待を背負ったGameBank

さて、もう1つの期待作は、Yahooの子会社として2015年1月に創業したGameBankからのタイトルだ。資本金は4.9億円、新進の会社としてはかなりの資本金を積んだ。

代表取締役の椎野真光氏はセガネットワークスにおいてスマホ向けRPG『Kingdom Conquest(キングダムコンクエスト)』のプロデューサーを担当した新世代のヒットメーカーである。

その椎野氏がYahooの支援を受けて創業した会社がGameBankだ。

従来のYahoo!のPC系「かんたんゲーム」とは異なる、スマホ時代に柔軟に対応する開発チームという位置づけでスタートした。私もGameBank創業時の椎野氏と面談をしているが、メディアのインタビューを遡ると「ヒットの方程式は存在する」という。

それらは以下のようなものだ。

  1. 独自の新組織による決裁のスピード化と、決裁レイヤーのシンプル化
  2. 巨大ポータル&メディアであるYahoo!からの送客(顧客の誘導)
  3. その送客を「ハードコアな客層」と「ビギナー客層」の両方をゲームカテゴリーごとに取り込む

というものだった。それらが功を奏したのかどうかは現時点ではなんともいえないが、2番目の点においては苦戦したのではないだろうか……。創業からのゲームラインナップを見ると厳しい結果として判断せざるをえないだろう。

もう1つの期待作「強くて難しいNEWGAME」だったのでは……

 今回、導入されたスマホゲームは『強くてNEW GAME』だ。タップしていく簡単なゲームシステムだ。

ちなみに、ゲーム命名の語源になったのは、以下のことに由来するのではないだろうか。

強くてニューゲーム(Wikipediaより)

ロールプレイングゲームなどの、本来はひとたびシナリオが進展したら初めからやり直さない限り前のシナリオをやり直せないゲームにおいて、ゲームをクリアすれば、クリア時点でのセーブデータの情報(キャラクターのレベルや所持アイテムなど)を引き継いで新たに初めからゲームを遊ぶ(ニューゲームを始める)ことができるようになるシステム。

今回のコラム執筆にあたって、開発者の意図も取材を行いたいと思ったが、「時間を巻き戻してシナリオのやり直しが効くという、選択肢が豊富、常に斬新な気持ちでプレイができるように、さらにはダメージがインフレしていく」という斬新なコンセプトで開発を行ったのという記事を拝読した。

GameBankは、すでに5作品を導入し、2016年の夏ごろから2017年初にむけて大半のコンテンツの運営をクローズした。おそらく、本作「強くてNEW GAME」は背水の陣といっても差し支えないコンテンツなのかもしれない。

こちらの個人的な所感は遊び方のシステムに慣れないとわかりづらいこと、タップするたびにキャラクターのボイスが重なるが、タップを止めるわけにはいかず、徐々に飽きてしまう演出が残念だ。

今回のコラム執筆にあたっては、椎野氏にゲームの状況を確認したところ、課題はあることは認識しており、さらなる改善を施しているとのことだった。

新しい変革を求めての船出

今回紹介したSoWhatの『LINE アキンド星のリトル・ペソ』、GameBankの『強くてNEW GAME』はどちらもタップゲーム。その完成度への賛否とビジネス成否の判断はさまざまだろう。

しかし、個人的に、注目していたコンテンツの両方がタップゲームという比較的簡易なインターフェイスとゲームシステムを導入したのは興味深い。

どちらのコンテンツも、アプリの広大な海へ苦難の船出となったかもしれないが、それらを越えて新しい大地を目指してほしいと思う。

「待てば海路(かいろ)の日和(ひより)あり」

(C)SoWhat, Inc.
(C)LINE Corporation
(c)GameBank Corp.