【法林岳之のFall in place】第33回: 国内発売が期待される新モデルも発表されたMWC 2017

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2月27日から3月2日まで、スペインのバルセロナで開催されていたMobile World Congress 2017。モバイル業界としては世界最大のイベントであり、世界中の携帯電話事業者やメーカー、関連企業が出展するイベントとして、知られている。今年は次なる世代へ向けた通信技術の動向をはじめ、国内発売が期待される新モデルも相次いで発表された。現地での様子をまとめて、お伝えしよう。

業界団体のGSMAが主催するMWC

2月27日から3月2日まで、スペインのバルセロナでモバイル業界最大のイベント「Mobile World Congress 2017」(MWC 2017)が開催された。

バルセロナのFira Barcelonaで開催されたMobile World Congress 2017

以前にも本連載で取り上げたことがあるが、MWCはGSMA(GSM Association)という業界団体が主催するイベントで、例年2月下旬から3月はじめにかけて、開催される。

GSMAは元々、欧州をはじめ、世界で広く採用されている「GSM(Global System for Mobile communications)」と呼ばれる第2世代の携帯電話方式の標準化や拡大などのために設立された団体。

現在は携帯電話の世代が3G、4Gと進むにつれ、世界中の携帯電話事業者や端末メーカー、ソフトウェアベンダー、コンテンツプロバイダなど、多数の関連企業が加盟する業界団体へと拡大しており、通信技術の標準化や携帯電話事業者間の相互接続、業界としての問題解決など、さまざまな課題に取り組んでいる。

MWCは例年1月にアメリカで開催される「International CES」、日本国内で開催される「CEATEC JAPAN」などと方向性が異なる。

基本的にモバイル業界の関係者のみが参加するイベントとして催されており、参加費も10万円を超えてしまうなど、一般ユーザーにはほぼ参加が難しくなっている。その分、関係各社は最新技術の展示などで情報収集をしたり、取引先との商談をするなど、活発なやり取りが展開される。

国内に関連する企業で言えば、NTTドコモはブースを出展し、5Gに関する技術展示や2月に国内でデモが行なわれたAIタクシーを解説するコーナーを設け、来場者の注目を集めていた。

NTTドコモは会場内にブースを出展。5Gなどの最新技術を広くアピールしていた

KDDIは田中孝司代表取締役社長がGSMAのボードメンバー(会社組織の役員に相当)に選ばれたこともあり、数多くの関係者が訪れ、標準化をはじめ、さまざまな会議や商談に参加していたという。

ソフトバンクは孫正義代表取締役社長が基調講演に登壇するなど、精力的に活動していた。

この他にも後述するソニーが新製品を発表したり、会期直前に国内で新製品を発表したトリニティがAndroidプラットフォームを採用した「NuAns NEO Reloaded」をひっさげ、出展するなど、各社の動きも活発なイベントだった。

国内発売が期待される新モデル

MWCは世界中の関連企業が集まることもあり、例年、会期前日及び会期初日にプレス向けのイベントなどを開催し、新製品を発表する。

昨年でいえば、ソニーモバイルがXperia Xシリーズ、サムスンがGalaxy S7 edgeなどを発表する一方、サムスンが数千台のGear VRを使ったプレスイベントを催し、大変な話題となった。

今年も会期前日にいくつかの関連企業がプレスイベントを開催し、中には日本市場での発売を明らかにした製品、もしくは発売が期待される新製品も発表された。その中からいくつかの製品をピックアップして、紹介しよう。

LGエレクトロニクス:LG G6

まず、国内ではau向けのisaiシリーズなどが好評のLGエレクトロニクスは、新しいフラッグシップモデル「LG G6」を発表した。

プレスカンファレンスではさまざまなゲストを招き、18:9の新しいディスプレイなどの特徴をアピールした

LG G6はユーザーが求める「大画面」と「持ちやすいボディ」というニーズに応え、5.7インチのディスプレイを搭載しながら、71.9mmというボディ幅に抑え、非常に持ちやすく、扱いやすいサイズにまとめている。

特徴的なのは「Full Vision」と名付けられた縦横比が18:9のディスプレイで、映画の21:9や絵画などの縦横比をヒントに、さまざまなコンテンツを迫力ある画面で楽しめるようにしている。

解像度は2,560×1,440ドット表示が可能で、一般的な16:9のディスプレイを搭載したスマートフォンに比べ、縦方向に長くなった印象だ。

LGエレクトロニクスが発表したフラッグシップモデル「G6」。FullVisionと名付けられた18:9のディスプレイを搭載

映像やゲームなどのコンテンツが楽しくなることはいうまでもないが、実はAndroid 7.0の画面分割表示を活かし、縦表示でも横表示でも見やすくしているなどの特長もある。国内での販売が期待されるモデルの1つだ。

Android 7.0の特徴を活かし、画面分割時には横向き表示にも最適化している

Huawei:P10/P10 Plus

次に、グローバル市場だけでなく、国内でもSIMフリー市場などで存在感を増しているHuaweiはLEICAとの協業で高い評価を得た「P9」シリーズの後継になる「P10」「P10 Plus」を発表した。

Huaweiのフラッグシップモデル「P10 Plus」は700ユーロ前後で販売される。国内市場向けは未定

カラーとモノクロのイメージセンサーを組み合わせたデュアルカメラのコンセプトは継承しているが、指紋認証センサーは本体前面のホームボタンに内蔵する形にして、Androidプラットフォームのナビゲーションキー(ホーム、戻る、アプリ履歴)をホームボタンの短押しや長押しに割り当てるなど、新しいユーザーインターフェイスにも取り組んでいる。

上位モデルに位置付けられるP10 Plusのデュアルカメラには、P9やP10よりも上位に位置付けられるLEICAの「SUMMILUX」と呼ばれるF1.8の明るいレンズを採用しており、一段とクリアで美しい写真を撮影できるようにしている。

本体は非常にすっきりしたデザイン。見えにくいが、ホームボタン部分はiPhone 7/7 Plusなどと同じような凹んだ形状を採用

国内市場投入については、何もアナウンスされていないが、これまでの流れからいずれかのモデルが国内に投入されるのはほぼ確実であり、今年の夏商戦以降の登場が期待される。

Lenovo:G5/G5 Plus

国と地域、エリアによって、ブランドを使い分けているLenovoは、Motorolaブランドの新モデル「G5」「G5 Plus」を発表した。

昨年、国内でも販売された「Moto G4 Plus」の後継に位置付けられるミッドレンジのモデルで、G5は5インチ、G5 Plusは5.2インチのディスプレイをそれぞれ搭載する。

チップセットにも違いがあり、G5はSnapdragon 430、G5 Plusは625を採用する。

Snapdragon 430を搭載したミッドレンジモデルのMoto G5。国内向けにも発売される

Motorolaはフラッグシップモデルの「Moto Z」などでも前面に指紋認証センサーを搭載してきたが、今回のG5/G5 PlusではHuawei P10やiPhone 7/7 Plusと同じように、ホームボタン内にセンサーを内蔵し、ボタン部分をわずかに凹ませた仕様のものを採用する。

G5に比べ、チップセットやカメラなどのスペックが高いMoto G5 Plus。こちらも国内向けに発売予定

このタイプの指紋認証センサーは防水防じんなどにも有効なことから、今後、業界のトレンドになるかもしれない。

G5とG5 Plusの国内展開については、MWC 2017の段階でモトローラ・モビリティジャパンが発売を明らかにしており、3月16日に国内向けの発表会が催される予定だ。

価格面でもかなり踏み込むと観られており、国内のSIMフリースマートフォンの市場において、HuaweiやASUSと並ぶ人気ブランドの地位を固めることになりそうだ。

ソニーモバイル:新Xperiaシリーズ

昨年、新しいXperiaのシリーズとして、Xperia Xシリーズを発表したソニーモバイルは、新しいプレミアムラインとして「Xperia XZ Premium」「Xperia XZs」、昨年のXperia XAシリーズの後継に位置付けられる「Xperia XA1」「Xperia XA1 Ultra」、これまでプロトタイプという形で展示をしていたXperiaスマートプロダクトのプロジェクター搭載端末「Xperia Touch」を発表した。

Xperia XZ Premiumはスマートフォン初の4K HDRディスプレイを搭載したモデルで、今まで以上に美しい映像コンテンツを楽しめることを特徴としている。

4K HDR対応コンテンツはAmazon Primeを通じて配信される予定だが、国内についてはまだ何もアナウンスができることがないとしていた。

このXperia XZ PremiumとXperia XZsに共通して搭載されているが新開発の「MotionEye」と呼ばれるカメラで、新たに開発した1,900万画素メモリー積層型CMOSイメージセンサーを採用している。

イメージセンサー内にメモリーを搭載することにより、最大960fpsのスーパースローモーションの撮影が可能になる。

Xperia XZ Premiumのチップセットには最新のSnapdragon 835を採用し、ネットワーク側が対応していれば、受信時最大1Gbpsの高速通信ができる。

Xperia XZsは昨年9月にIFAで発表され、国内では11月から販売されているXperia XZをベースに、MotionEyeカメラを搭載したモデルで、当面はXperia XZとXperia XZsを併売するとしている。

Xperiaシリーズは美しいデザインと高い完成度でAndroidスマートフォンの人気機種として定着しているが、その一方で、あまりにも早い新モデルの登場で、ユーザーとしても買い時がわからなくなってきたという指摘も多い。

今回もXperia XZ Premiumはディスプレイのスペックなどが違うとは言え、Xperia XZとXperia XZsはわずか半年の差で、カメラが大幅に刷新されており、従来モデルのユーザーからの不満の声がさらに増えることになるかもしれない。

SAMSUNG:Galaxy Tab S3

そして、本来であれば、昨年に引き続き、SAMSUNGもGalaxy S7シリーズの後継モデルをMWC 2017に合わせて発表するだろうと予想されていたが、残念ながら、昨年発生したGalaxy Note7のバッテリートラブルの対応などもあり、今回は発表が見送られ、3月に29日に発表されることが明らかにされた。

その代わりというわけではないが、今回はタブレットの「Galaxy Tab S3」、Windows 10搭載のパソコン「Galaxy Book」を発表した。いずれもGalaxy Noteシリーズなどで培われてきた「Sペン」による操作に対応する。

Sペン、キーボードを組み合わせて利用可能なGalaxy Tab S3

Sペンに対応したWindows 10パソコンのGalaxy Book。2in1スタイルで、Surfaceシリーズなどの対抗モデルに位置付けられる

両モデルとも完成度の高いモデルだが、国内市場ではしばらくGalaxy Tabシリーズを供給していない上、Windowsパソコンも展開していないので、どちらも国内市場への供給は期待薄といえそうだ。

また、今回のSAMSUNGのプレスカンファレンス(記者説明会)は本来、プレス関係者しか入場できないはずなのに、まったく無関係の環境保護団体が乱入するなど、イベントの仕切りの面でも非常に粗い印象を受けた。

Galaxy Note 7のバッテリートラブルは1月に発表で、ひとまず解決を見たはずだが、その影響は社内外にもまだ残っている印象は否めず、今後、SAMSUNGがどのように巻き返していくのかが注目される。