[黒川文雄のゲーム非武装地帯] 第28回: Nintendo Switchは希望の匂いのするデバイス

Eye

2016年10月のこのコラムで、NX(当時のNintendo Switchコードネーム)をとりあげた。あれから足掛け3ヵ月が過ぎた。そのときのコラムでは「(略)……ここ数年、つまづき、傷ついてきた任天堂にとって希望の匂いがするデバイスである」と位置付け期待を寄せた。

そして、2017年1月13日のNintendo Switchの発表会を迎えた。当日、私はNintendo Switch発表会の進行を見ながら、同時に株価の状況もチェックした。

なぜならば、一般的な市場の動向や意向は株価というわかりやすい指標が参考になるからだ。

株価は上がる!と思ったが……

任天堂の株価は、2016年12月の『スーパーマリオ ラン』の導入時に一時的に上昇したものの、その後ダウンロード数が伸びないこと、1,200円という定額課金がネック、高額だというレビューやネットの声が高まり、株価の上昇機運は見られなかった。

辛うじてNintendo Switchの発表会の直前には株価の上昇傾向を見せたが、それも束の間、価格発表、サードパーティーのコンテンツ紹介などプレゼンテーションの進行とともに下落傾向に歯止めがかからなくなった。

いったい全体、市場は何を求めているのか? と若干驚くとともに、もしかして自分の感覚が混迷しているのかも知れないと思った。

本体価格、従来の任天堂のハードウェアより高めの設定だが、赤字になる商売はしないという社の方針を反映したものであり、発表スペックは省くが、じゅうぶんなスペックをもっているので私は妥当ではないかと思った。

それでも株価は下がるのか……。

家庭用ハードと携帯端末のハイブリッド型据え置き機

Nintendo Switchそのものの完成度と、マシンスペックは現在において価格相応なものだと思う。

同時に公開されたゲーム『ARMS(アームズ)』も1年程前から任天堂社内で開発されていたもので、アームが伸びてスナップを効かせながら撃つ(戦う)というギミックもなかなか面白い発想だ。

そして、それらに最適化されたコントローラーJoy-Conは、HD振動機能を有しており、リアルな触感を演出するという。新しいプレイ・スタイルを提供してくれると思う。

さらに、このJoy-ConはVR的な演出が可能なデバイスだと予想している。今のところはあまり遊びに幅がないように見えるが、将来的は拡張性を秘めたデバイスになることだろう。

加えて、ネット対戦を前提にした8台の通信連携機能など、現在に蘇った(初代)ファミリーコンピュータをイメージしたらこんなハードウェアになりました……といって差し支えないだろう。

登壇した君島社長の言葉を借りるならば「多様化された据え置き型ゲーム機」ということになる。わかりやすく例えるならば、「家庭用ハード」と「携帯端末機」のハイブリッドを具現化したカタチのデバイスといえるだろう。

それでも歯止めが効かないのはなぜか?

多くのゲーム業界関係者や、ゲームへの関与が高いアーリーアダプター層のファンたちは、それらの機能や可能性は10月のNXのプロモーション映像を見た時点でわかっていたはずだ。

株式市場で株価に脊髄反射のように反応したのはアナリストであり、(国内外の)投資家、投資ファンド系だったに違ない。

おそらく彼らを納得させて株価を上昇気流に乗せるには、「任天堂スマートフォン」を出すくらいの思い切った、振り切った発表が必要だったのかもしれない。

しかし、それらを任天堂が是とするはずがない。

何度もいうようだが、子供から大人まで、誰にでも優しい玩具的なエンタテインメント提供会社が今までの任天堂であり、おそらくこれからも大きく変わらない開発コンセプトであり、提供するサービスに違いないからだ。

そして、そのサービスとコンセプトの一端は「みまもりSwitch」にも見てとれる。ハードとコンテンツサプライヤーとしての責任もまっとうしようとしている。

こんな発想は後追いでは誰でもできるが、先駆者としてこのような提案をそっと行ってくるところが任天堂たる所以(ゆえん)だろう。

新生任天堂の飛躍に期待

人に寿命があるように、企業にも寿命がある。人の寿命と人生は死んでしまえばそれきりだが、企業は経営者が交代したり、展開する事業ドメインが変わったりすることで、新しい命を吹き込まれることがある。

私は今回の任天堂の発表会にはその一端を見た。

発表のプレゼンテーション、開発責任者の代替わり、若返りなど、企業として極めて真っ当なリストラクチャリングがそこにある。

もちろん、社内の本当のところはわからない。変な社内政治や足の引っ張り合いのような暗闘もあるのかもしれない。しかし、それら清濁合わせ呑むような大きなダイナミズムを今回の発表に感じる。

株価も、せいぜい安くしてもらってけっこうではないか。今ならば、かつては高額で買えなかった任天堂のサポーターの手に届く金額になったのかもしれない。それでも1株の購入には250万円くらいが必要だが……。

サードパーティーのコンテンツにも期待

プレゼンテーションの中で、参加表明したパブリッシャーにも期待が高まる。

セガは『龍が如く』シリーズのプロデューサーの名越氏が登壇。提供される作品は明らかにはならなかったが、2001年に任天堂ゲームキューブのローンチコンテンツとして『スーパーモンキーボール』を開発している。

もしかしたら、このバージョンアップ版か、それとも『龍が如く』シリーズのリメイクかもしれない。個人的にはゲームハードの特性上、みんなが集まってプレイするスタイルにマッチした『スーパーモンキーボール』のアレンジ版を期待している。

そして、ご本家、任天堂が3月3日に同時発売するコンテンツは『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』と申し分のないタイトルが準備された。

Nintendo Switchの日本での販売価格は、29,980円(税別)と、じゅうぶん魅力的な価格だ。

さらには、『ARMS(アームズ)』は今春発売、『Splatoon2』は今夏発売、『スーパーマリオ オデッセイ』は今冬発売、おそらくそのスキマを素晴らしいサードパーティーのコンテンツがファンを唸らせてくれることだろう。

期待がどうだ……とか、価格がどう……とか、いわせておけばいい。

自社のコンテンツを全面的な押し出していることからも必勝態勢の布陣は間違いない。スペックがどうのこうのとかいうことは後からの成功伝説でいいではないか。

それよりも、来る3月3日に手に入る、新しくて、楽しいエンタテインメント体験を期待しようではないか。