浜村弘一氏らキーパーソンに聞く!e-Sportsの現状と展望

ゲームを使ったスポーツジャンルe-Sportsが日本でも注目されだしている。その波は、PCゲームだけにとどまらず、スマホゲーム界にも押し寄せている。ここでは、e-Sportsを取り巻く環境や業界のキーパーソンへのインタビューを中心に、e-Sportsの現状と今後の展望をお届けする。

今、スマホにも広がるe-Sports

e-Sportsとは、Electronic Sportsの略称で、ゲームを使ったスポーツ・競技を指す言葉だ。

日本でも近年は耳にすることが増えてきたが、韓国や欧米では以前より浸透しており、億単位の賞金が出る大会も開催され、スポーツの1種として認識されている。

e-Sportsの種目としては、主にPCのオンラインゲームが扱われているが、日本においては家庭用ゲーム機が広く普及したためにあまり知られてこなかったという背景がある。

近年は、国内でも大会が頻繁に開催されるようになり、プロチームも続々と発足。従来のスポーツと同様とまではいかないが、徐々に認知されている状況だ。

また、スマホゲームでもTCGなどの比較的動きの少ないジャンルでe-Sports大会が開かれるようになり、より身近な存在となりつつある。

国内で開催されているe-Sports大会

近年増えてきた国内大会の一部紹介しよう。どの大会・イベントもtwitchやYouTubeなどで試合の模様をライブ配信しているので、インターネットの環境さえあれば誰でも観戦が可能だ。

中にはチームに所属していない一般のプレイヤーでもエントリーできる大会もあるため、自分がプレイしているタイトルの大会は要チェックだ。

日本eスポーツリーグ

日本eスポーツリーグは、2016年11月にスタートしたばかりの国内リーグ。

5都市6チームによる総当たり戦で、2017年1月22日に行われるオフライン決勝に向け、毎週土曜日に熾烈な戦いを繰り広げている。

試合の模様はtwitchでライブ配信されるほか、YouTubeで過去の試合がアップロードされているため、いつでも観戦を楽しむことができる。

RAGE

CyberZが運営する「RAGE」は、年間を通じて複数のジャンルの大会を開催するe-Sportsイベント。

スマホゲームも積極的に競技として採用しており、『Vainglory』『Shadowverse』の大会を開催した実績を持つ。

大会出場の敷居が低いことも特徴で、e-Sports大会への参加を考えているプレイヤーは今後の動向をこまめにチェックしておくといいだろう。

日本eスポーツ選手権大会

日本eスポーツ選手権大会は、一般社団法人 日本eスポーツ協会(JeSPA)が主催するe-Sportsの全国大会。2016年3月に第1回大会が開催された。

第2回は2017年2月25~26日に豊洲PITにて開催されることが決定している。

https://twitter.com/JeSPAofficial/status/733637454435995648?ref_src=twsrc%5Etfw

採用種目に関するアンケートでは、『Shadowverse』や『Hearthstone』などのスマホゲームが票を集めており、実際に種目として採用される可能性が高いだろう。

JeSPA事務局長の筧誠一郎氏に聞く、日本の現状

JeSPAは日本eスポーツ選手権大会の主催の他、e-Sports普及のためさまざまな活動をしている。

今回、JeSPAの事務局長を務める筧誠一郎氏にインタビューする機会をいただき、JeSPAの活動や目的、e-Sports界の現状を聞いてみた。

JeSPA事務局長の筧誠一郎氏。eスポーツコミュニケーションズ合同会社の代表も務め、国内e-Sportsリーグの運営や選手への支援活動などを行っている

――JeSPAはe-Sportsの普及・発展を方針として掲げ、中学・高校の部活動の設立支援を行っているそうですが、これまでに実際に設立された事例はございますか?

筧誠一郎氏(以下、筧):残念ながらまだないですね。

海外の例では、ノルウェーやスウェーデン高校でeスポーツが授業に取り入れられていますが、日本では、授業で採用するまでたどり着かないのが現状です。

ですが、囲碁部や将棋部があるのと同じように、eスポーツ部ができればいいなと思っています。実際に、eスポーツに興味を持っている高校生は多くて、JeSPAがこれまで協力した2回の高校生選手権にも参加希望者が殺到しました。

先日も開成高校VS麻布高校の『League of Legends』の試合を機材提供といった形で支援しました。

こういったムーブメントもあることですし、今後5~6年を目途に部活動の設立を実現したいと考えています。

――プロゲーマーを育てる専門学校はできましたよね。

筧:ええ。今後も増えていくと思いますよ。高等専修学校でもeスポーツを扱う学校が出てきています。

直近の例では、西葛西にある東京アニメ・声優専門学校にe-sportsの学科が設立されましたし、北海道ハイテクノロジー専門学校では来年4月にプロフェッショナルゲーマー専攻が新設されます。

他にも、大阪スクールオブミュージック高等専修学校や日本工学院といった学校がeスポーツのコースを始めることが決まっていますし、2018年にはさらに3校がeスポーツコースを新設するという話も聞いています。

――そういった学校ではどういった授業・教育をしているのでしょうか?

筧:ゲームプレイの技術はもちろんですが、プロゲーマーになった際に必要な経理の知識などもおしえているようです。プロゲームのチームに所属せず、個人事業主として活動するケースもありますから。

学校によっても特色があり、例えば東京アニメ・声優専門学校の場合は、「総合プロゲーマー専攻」「キャスター専攻」「宣伝プロモーション専攻」「イベントスタッフ専攻」の4つのコースが用意されて、それぞれに必要なスキルを磨く授業が提供されています。

対して、北海道ハイテクノロジー専門学校は、プロゲーマーのスキルを磨くこともありますが、eスポーツ業界にどうやって就職するかというところも重点的にと表明しています。

今後、学校が増えるにつれて多様化していくでしょうから、朝から晩までひたすらゲームの練習をする学校も出てくるかもしれませんね。

――日本の現状として、個人事業主のプロゲーマーというのは、どの程度の割合なんでしょうか?

筧:どこからどこまでをプロゲーマーと呼ぶかにもよりますね。

というのも、ミュージシャンやお笑い芸人と同じで、アルバイトをしながらでもゲームでお金を稼げたらプロゲーマーと名乗れると思うんですよ。

そういった人も含めると個人事業主の方が圧倒的に多いですよね。

チームに所属してフルタイムでゲーマーとして働いている人は、DetonatioNやDeToNator(※)の一部のチームの一部の選手に限られます。

チームに所属していても、他の仕事をしながら活動している人はかなり多いと思いますよ。

※DetonatioN、DeToNator:日本国内のe-Sportsのプロチーム

――種目の選定について、スマホゲームが採用された事例をおしてえてください。

筧:スマホゲームだと、『Vainglory』がまず挙げられます。そこから『Hearthstone』もユーザーを増やし、海外ではものすごい人気を誇っています。

日本では、『Hearthstone』が流行るのと同時に『Shadowverse』がリリースされて、今やイベントをひらけばたくさんの人が集まるタイトルになっています。

この3作品が主なモバイルのeスポーツ種目と言えるでしょう。

JeSPAで実施した種目に関するアンケートでも、これらのタイトルには多くの票が集まっています。

――実際に種目として取り扱う際、どのような基準で選んでいるのでしょう?

筧:FPSのようにリアルタイムを追求するゲームだと、コンマ1秒の遅れが勝敗を分けることがありますので、タイムラグがないということが必要条件になります。そこがスマホだと非常に難しいですね。

ですので、ターン制のTCGや、『Vainglory』のように比較的ゆっくりゲームが展開されるMOBAといったタイトルがモバイルの種目として採用されているというわけです。

他のスポーツとまったく同じで、選手の技術以外の要因で勝敗が左右されてはいけないと考えています。

――海外と日本を比較すると、ジャンルごとのプレイヤー人口に違いはありますか?

筧:海外では、『League of Legends』や『Dota 2』といったMOBAが圧倒的に人気です。次いで、FPS、サッカーゲームが続きます。

対して、日本では格闘ゲームが断トツで人口が多いです。ゲームの販売本数以上に、ゲームセンターでしかプレイしない人もいるでしょうから、どのくらい人口があるのか予想がつかないですね。

あとはTCGが一気に人口を伸ばしているため、規模がつかみ切れていない状況です。

――最後にe-Sportsを普及させるために行っていること、協会としての今後のビジョンをお聞かせください。

筧:海外と比較すると、日本の現状はeスポーツ後進国ですが、着実に話題が増えていると感じます。

これを一過性のムーブメントで終わらないようにしていかなければならないと考えています。

今現在の取り組みとしては、各都道府県に支部を作っていて、支部によっては活発に動いてくれています。

各地でイベントを開催すると、熱い気持ちを持ったプレイヤーが少なからず集まってくれて、うれしい限りです。

イメージとしては、囲碁の棋院みたいなコミュニティを全国で作っていきたいですね。

浜村弘一氏が語るe-Sports隆盛の背景

続いて、JeSPAや一般社団法人 e-sports促進機構などで理事を務めている浜村弘一氏に、日本でe-Sportsが盛り上がりつつある要因や自身の考えを聞いた。

カドカワ株式会社取締役の浜村弘一氏。e-Sportsに関しても精力的に取り組んでいる

――浜村さんは、JeSPAや一般社団法人e-sports促進機構の理事を務めていらっしゃいますが、どういった活動をされているのでしょうか?

浜村弘一氏(以下、浜村):JeSPAは選手の育成・派遣を行っているのですが、それに興味をもって問い合わせをしてくれる方が多くいらっしゃいます。

それに答える中で得た改善点などを理事会で主張する形で参加しています。

対して促進機構は、大会の支援をする組織なので、そのあたりの議論を交わしています。

――浜村さんがこういったポジションにいるとなると、メディアとして盛り上げてほしいという意見もあるのでは?

浜村:そのようなお話をいただきまして「闘会議」を立ち上げました。

『スプラトゥーン』や『モンスターストライク』の大会を開催して、e-Sportsのムーブメントに近い状況を作っているところです。

実は、日本でe-Sportsが本当に流行るのか迷っていたんですが、実際にやってみると観客も熱狂してくれていました。

e-Sportsの根源って熱狂だと思うんです。誰かがプレイしているのを見て熱狂が起きるというのを強く感じました。

――確かに、友達の家やゲームセンターなどで人のプレイを見ていっしょに盛り上がる文化は昔からありましたね。それが最近になってe-Sportsという切り口で盛り上がっているというのは、何か要因があるのでしょうか?

浜村:動画サイトの普及だと思います。

ゴルフや野球、サッカーといった人気のスポーツも、プロスポーツとして人にフォーカスしてテレビで放送することで見る人が出てきました。

これらのスポーツも最初は自分で遊ぶことから始まっていて、自分で遊ぶものから見るスポーツになって、そこからスターが生まれてプロが生まれたんですよ。

ゲームではなぜそうなっていなかったというと、テレビが放映しなかったから。

ところが、インターネットを通じて放送する環境ができて、自己表現したいという人が増えてきた。

「歌ってみた」とか「踊ってみた」が流行りましたけど、これらには才能が必要だったんです。

でも、ゲームの動画配信に関しては、ゲームにツッコミを入れて面白いことが話せれば、インタラクティブに面白がってもらえるという土壌が動画サイトによってできたわけです。

結果的に、ゲームは1人で楽しむものから、見て楽しむものになった。

見て楽しむものになったら、ゲームの大会がもっと簡単に自己表現ができる場になる。

うまくしゃべれなくても、ゲームが好きだったら放映ができる。その中でコミュニティが生まれ、見る人が増え、スターが生まれた結果、ゲームがプロスポーツ化していった、というプロセスをたどっているのです。

日本のゲーム文化がe-Sportsの足かせに!?

――海外と比較して、日本でe-Sportsが流行っていないのは何が原因でしょう?

浜村:韓国では特にそうですが、PCが主なゲームプラットフォームで、インターネットでの動画配信が家庭用ゲーム機に比べて簡単にできたのが大きいです。

日本で人気のゲームジャンルはストーリーを楽しむRPGで、動画配信を行うとネタバレになってしまう。

その結果、e-Sportsに向いているゲームが少ないという状況になってしまったのでしょう。

――「闘会議」では『モンスト』の大会を実施したということですが、他のスマホゲームでも大会をひらくことは可能でしょうか?

浜村:もちろんできると思いますよ。

最近リリースされたタイトルだと『白猫テニス』とか『Shadowverse』、有名なものでは『パズル&ドラゴンズ』など、どんなタイトルでも可能性はあります。

同じレギュレーションで戦える要素があれば、どんなゲームでもe-Sportsとして成立します。

――スマホゲームだと未だにガチャでキャラクターやカード、武器といった要素を引いて強くなっていく部分が大きいと思います。そこで有利・不利が出てしまうのでは?

浜村:それはやり方の工夫で対応できると思ってます。

カードゲームだったら、大会で使えるカードを与えれば同じレギュレーションで戦えますよね。

『パズドラ』にはそういったモードがありますし、先日開催された『Shadowverse』の大会では、大会運営側が用意した端末を使って参加者によるカードの優劣なく対戦するというルールでした。

公平に戦えるモード設計さえできればいいわけです。今後、e-Sportsを意識した設計のゲームも増えていくでしょう。

――東京ゲームショウ2016ではe-Sportsコーナーが設置されました。ご覧になった印象はどうですか?

浜村:非常に盛り上がっていましたね。

日本のe-Sports大会って、スマホゲームのゲーム内イベントといっしょなんですよ。そこに熱狂が生まれて、人がゲームに夢中になるんです。

大きな違いがあるといえば、e-Sportsイベントは開発コストがかからないことです。

ゲーム内イベントは、グラフィッカーを動かして新しいカードやキャラクターを作ったり、イベント専用のステージを作ったりする必要がありますが、e-Sportsのイベントではそれがありません。

すでに存在するものだけで、ユーザーの熱狂を生むことができるのがe-Sportsの強みなんだと思います。事実、いろんなゲームがe-Sportsのイベントを開催しています。

――確かに、動画配信を中心にe-Sportsを見る人が増加しているのはとても感じています。では、大会に出場する人はどうでしょう? 若干、敷居が高い印象があるのですが……。

浜村:『スプラトゥーン』や『モンスターストライク』では地方イベントを実施したんです。各地方で大会を開いたんですが、非常に多くの人が集まりました。

1日でできる試合数は40組くらいが限界ですので、申し訳ないことなのですが、出場したくてもできない人が出てきてしまった。

すると、例えば東京で出られなくて、九州や北海道にまで遠征する人も増えてきて、どこの会場もたくさんの人が集まりましたよ。

TVで楽しむe-Sports

野球やサッカーなどの人気スポーツは、ニュース番組のスポーツコーナーはもちろん、専門のテレビ番組が制作されているが、e-Sportsも専門のテレビ番組が放映中。

フジテレビONEの「いいすぽ!」とTOKYO MX1の「eスポーツMaX」の2番組がe-Sportsを専門に扱っているのだが、今回eスポーツMaXの制作に携わる東島真一郎氏に番組立ち上げの経緯や、制作の裏側を聞いてみた。

東島真一郎氏。過去には人気番組「ゲームセンターCX」のADを勤め、番組ファンから愛されている人物でもある

――『eスポーツMAX』が始まった経緯をおしえてください。

東島真一郎氏(以下、東島):以前所属していた制作会社の社長と筧さんが以前からお付き合いがあって、e-Sportsについて話していたんですね。

ゲームなんだけどスポーツということで、世界では人気がありゲーム業界でも1つのジャンルとなっているということを聞いていました。

そんな中、TOKYO MXで新しくスポーツ番組をやりたいというお話がありました。

野球やサッカーのような地上波の局がやっているスポーツではなく、MXといえばこのスポーツというようなものを確立したいという思惑があったようです。

――e-Sportsのテレビ番組というのは前例がなく、参考にするものがない状況だったと思うのですが、苦労したのではないですか?

東島:e-Sportsという言葉そのものもあまり浸透していなかったので、今みたいに賞金付きの大会のような目に見えてわかる形のものがなかったんですね。

e-Sportsを伝える際に、どのゲームを取り上げるのか、ジャンルはどれを選んだらいいのか、根本的なところではこの番組を誰に向けて作るのか、というところを考えなければいけなかったですね。

番組の放送枠は深夜帯だったので、e-Sportsをある程度知っている人たち、初心者というよりはレベルを少し上げて作っていくことにしました。

――選手などの関係者に取材した際の反応はどうでしたか?

東島:最初のころはもしかしたら抵抗があったのかもしれませんが、意外と好意的に対応してくれて、テレビの取材だからってあまり構えずに、面白がって楽しく取材させていただきました。

テレビで取り上げることに対して、本当にウェルカムな雰囲気でした。

――番組が始まったころと比べると、日本国内の情報も増えてきたのかなと思うのですが、番組制作に携わる側から見て、どういった印象でしょうか?

東島:初期の段階から日本のプレイヤーを取り上げていました。海外の情報を使う場合、許諾の問題だったりとかいろいろなハードルがあったので、ニュースなどの1コーナーで扱っていました。

ちょうど番組が始まったと同時期に、「League of Legends Japan League」(LJL)が立ち上がったり、DetonatioNやDeToNatorといったプロチームが出てたので、これらの選手や携わる方々をフィーチャーしていきました。

――ゲーム業界全体では、Free to Playのスマホゲームが市場を拡大して、プレイするタイトルの移り変わりが激しくなっている印象ですが、e-Sports業界の方々や選手の皆さんを見ていて、番組開始当初と現在で様変わりしていることってありますか?

東島:e-SportsのプレイヤーはほとんどPCでプレイしていますよね。海外ではPCゲームが主流であるからだと思いますが。

日本では、コンシューマーゲーム機で遊ぶという文化が根強いですが、e-Sportsを知れば知るほどPCの方が割合が多いと感じます。

とはいえ、モバイル向けのゲームでもe-Sportsに合うタイトルが出てきていて、『Vainglory』は扱っていますし、『クラッシュ・ロワイヤル』も1回取り上げました。

――最後に、e-Sportsの番組を制作する上で、業界人としての今後の課題をお聞かせください。

東島:eスポーツMaXでは、他のスポーツと同じような解説をテーマにしています。例えば、「ここの局面でこういう動きをしたから勝敗が決まった」というような解説です。

それを伝えるときに、1つの視点だけでは不十分なんですよね。全体を引いて見せないと、状況を伝えるのが難しいんです。

e-Sportsって、観戦することが魅力の1つだと思うので、そういった観戦のためのシステムがあるゲームが今後e-Sportsの種目として流行る要素なのかと思います。

YouTubeで過去放送回が視聴可能!

eスポーツMaXは毎週月曜日25:40~26:10にTOKYO MX1にて放送中だが、TOKYO MXのYouTubeチャンネルにて過去の放送分が公開されている。

数少ないe-Sports専門番組から、本格的な実況・解説を視聴して体験してほしい。

韓国には大規模なe-Sports施設が存在

ここまで話をまとめると、日本でもe-Sportsが盛り上がりつつあり、大会や施設、教育の場といった環境も整ってきていることが明らかになった。

では、e-Sports先進国である韓国ではどうだろうか?

韓国ソウル特別市にあるe-Sports施設「NEXON ARENA」を運営するNexon KoreaのIntegrated Business Partリーダー兼e-Sports TeamチームリーダーのYoung-min Hwang氏に韓国のe-Sportsの実情を教えてもらった。

――NEXON ARENAとはどういった施設なんでしょう? そこに行けば何ができるのでしょうか?

Young-min Hwang氏(以下、Hwang):NEXON ARENAは、Nexon KoreaとLoud Communicationsの共同投資による、ゲーム会社として世界で初めてオープンした「e-Sports専用施設」となっています。

約500席の座席と19×3.4mの大型モニターを備えており、観戦を楽しむことができます。

また、競技をプレイするブースは、5対5と1対1の対戦ができる競技ブースを備えています。

――プロ選手ではない一般の人も競技に参加できるのですか?

Hwang:オフラインもしくはオンラインにて予選が実施され、そこで勝ち抜いたプレイヤーが、NEXON ARENAで行われる大会に出場できます。

施設への入場自体は、大会によって有料のものと無料のものがありますが、大会が開催されていないときは、個人の方向けに設備を解放して無料で使えるような形をとっています。

また、企業向けには有償で、イベントスペースとして提供したりしています。

――オープンする場所をソウルにしたのは、何か理由があるのでしょうか?

Hwang:e-Sportsの観戦をするメインの層が10~30代ということで、この年齢層の方々にとってアクセスの良い場所ということで、ソウルの繁華街にオープンすることにしました。

設立してから約3年間の間に628回の試合を行っており、累計で約183,700名の方が来場してくれました。これまでにNEXON ARENAで開催された大会の賞金総額は、約46億ウォンにのぼります。

――NEXON ARENAで行われる大会は、Nexonのタイトルを使った大会なんでしょうか?

Hwang:大会で使われるゲームタイトルは、Nexonのタイトルが60%を占めています。

残りの40%は、『League of Legends』など、e-Sportsの種目として人気のある他社のタイトルです。

他社のタイトルでは、『League of Legends』や『StarCraft Ⅱ』といったグローバルでも人気のタイトル、Nexonタイトルでは『カートライダー』や『EA SPORTS™ FIFA Online 3』などが特に人気を集めています。

――やはりPCゲームが多いですか?

Hwang:そうですね。80%がPCオンラインゲームの大会sです。モバイルやコンソールのタイトルも、PCオンラインゲームと比較すると少ないですが大会を開いています。

――モバイルゲームも使われているんですね。韓国でもモバイルゲームが年々増えている印象です。モバイルゲームでe-Sportsの大会を開くにあたって、どういった課題があるとお考えですか?

Hwang:これまでに大会を開催したモバイルタイトルは、3~4タイトルほどあります。この経験をもとに、今後もさまざまなモバイルゲームで、どのように大会を運営していくのがベストかを模索しているという状況です。

モバイルゲームのユーザーは、1つの空間にとどまらず、さまざまなところに移動しながらゲームをプレイします。

そういったPCゲームユーザーとは異なるプレイスタイルを持った人に向けて、これまで行ってきたやり方とは異なるアプローチを実践する等、工夫する必要があると感じています。

また、e-Sportsに最も適したモバイルゲームを探し当てることが難しいですね。

――日本では、観戦者に対する配慮が足りないことがe-Sportsがいまいち浸透しない原因の1つという意見もあるのですが、見る側の人へ向けた工夫は何かされていますか?

Hwang:やはりe-Sportsに特化したタイトルを見つけることが最も大事であると思っています。

そのうえで、ユーザーに人気のあるタイトルをe-Sports化させるとともに、競技の模様を俯瞰で見れるような観戦者用のモードを充実させることも重要です。

――日本ではe-Sportsを専門に扱うテレビ番組があるのですが、バイオレンスな表現の多いFPSゲームは取り上げにくいそうです。韓国の番組ではどのように対処しているのでしょう?

Hwang:韓国には、ゲーム専門の放送局が5つあり、当社がパートナーシップを締結しているLoud Communicationsが運営する「SPOTV GAMES」や10年の歴史を誇る「OGN」といったチャンネルが、e-Sportsを専門に放送しています。

これらのチャンネルでは、ゲーム内で血の色を白くしたり、射殺シーンを打撃感だけで表現するような編集にして番組を制作しています。そういった工夫をすることでFPSゲームでも放送できるようになるのです。

韓国には、ゲーム審議委員会と放送審議委員会という2つの機関があり、ゲームタイトル1つ1つを確認しているため、過激表現の放送で問題となったケースは、ほとんど見られません。

――最後に、日本のゲーマーやe-Sports愛好家のみなさんにコメントがあればお願いします。

Hwang:日本はe-Sportsがまだ根付いていないと聞いていますが、それ以上に私たち韓国人から見ると、日本はゲーム大国というイメージが強いです。

そのため、日本の皆さんとは、今後e-Sportsに関しての情報交換や交流をしていきたいと思っていますし、日本のユーザーの方たちが今後e-Sportsに対してより興味を持っていただけるとうれしいなと思います。

e-Sportsはスポーツとして根付くか?

海外では人気を集めているといっても、まだまだ他の競技に比べてスポーツとして認知されているとはいえないのが現状。e-Sportsを知っているかどうかという該当アンケートを取れば、おそらくNOと答える人が多いはずだ。

浜村氏の「野球などのスポーツも最初は自分で遊ぶことから始まっていて、自分で遊ぶものから見るスポーツになって、そこからスターが生まれてプロが生まれた」との言葉は納得で、筆者も子供のころに野球をやってプロ野球選手に憧れたものである。

もし、e-Sportsがもっと認知され、プロゲーマーという職業が子供でも知っている存在になれば、ゲームで遊んだ子供はかなりの割合がプロゲーマーになりたいと思うのではないだろうか。

10年後、あるいは20年後、子供のなりたい職業ランキングにプロゲーマーがランクインする日がくるのかもしれない。

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