脱出ゲーム 名探偵コナン~ミステリーシアターの謎~【ゲームレビュー】

人気アニメ『名探偵コナン』を題材にした人気シリーズの最新作『脱出ゲーム 名探偵コナン~ミステリーシアターの謎~』。今作の舞台となっているのは、とあるテーマパークに完成した「ミステリーシアター」だ。コナンたちはアトラクションの中に散りばめられた謎を解き明かして、無事に脱出することができるのか!?

アトラクションに閉じ込められたコナンと蘭――
遊園地を舞台に脱出ゲームの幕が上がる!

パズル性を持った「脱出ゲーム」というジャンルのルーツは、PCゲームの黎明期にあったアドベンチャーゲームに由来するわけだが、カセットテープでゲームソフトを販売していた時代に比べれば随分スタイリッシュになったものだ。なにせ、当時はコマンドもキーボードによる直接入力で、「取るってなんだっけ? Take? Pick?」などと大騒ぎしながら、みんなで解き進めていった覚えがある。

そこから時代は進み、グラフィックもゲームの容量も大幅に進歩。アイテムは画面タップで入手できるなど、ユーザビリティーも時代を追うごとに向上してきている。そして、限定空間から脱出するというコンパクトさが現在の到達点というわけだ。およそ10手で解決するこの脱出ゲームというパズルは、手軽さと、複数のマップを組み合わせることで大きなストーリーの流れが作りやすいというメリットがある。

この取り回しのよさで今ではすっかり主流となった脱出ゲームだが、これに人気コンテンツを乗せたのが本作『名探偵コナン ミステリーシアターの謎』だ。すでに関連タイトルが2作リリースされており、合わせて累計300万ダウンロードという驚異的な人気を誇るシリーズである。

阿笠博士に誘われ、とあるテーマパークを訪れたコナンたち一行。この先に待ち受ける運命を、まだ知る由もない

今回の舞台は遊園地。突然のアクシデントに一行は……

今作では、阿笠博士が抽選で入手したとあるテーマパークの新作アトラクション「ミステリーシアター」のチケットが事件の発端となる。正式オープンの前に先行体験できるという触れ込みで、阿笠博士とコナン、そして蘭、園子、灰原、歩美、光彦、元太の8人はテーマパークへ。しかし、脱出ゲームよりもヒーローショー&出演するイケメン俳優に興味が移った園子、歩美、光彦、元太は、コナンたちと別れてヒーローショーのステージへと向かう。

ヒーローショーに登場する「仮面ヤイバー」は、もちろん原作者である青山剛昌氏のコミック『剣勇伝説YAIBA』から。しかし、仮面ヤイバー……どんなキャラか見てみたい気もする

アトラクションには人影はなく、開いていた入口から中に入った阿笠博士とコナン、灰原、蘭の4人。しかし、突然の停電が発生。照明が点いた後には、阿笠と灰原の姿が消えていた。入口は固く閉ざされ、戻ることはできない。かくして、コナンと蘭はアトラクションの謎を解きながら、先に進むしかなくなってしまう。

機材のトラブルを疑うコナンだったが、スタッフはアトラクション内に人がいることを知らない様子

これが本作のイントロダクションであり、以降は一般的な脱出ゲームのセオリーどおり、アイテムとヒントを見つけてゴールを目指していくことになる。ステージはプロローグと第1章~第5章の構成で、最初の部屋を脱出した後の第2章以降は追加で購入する必要がある。第1章でゲームの雰囲気を体験してから、先に進むかどうかを決めるといいだろう。

1章以降は各章を分割して遊ぶことはできず、一括購入で360円が必要だ

推理コミックが原作だけあって多種多様なギミックが目白押し

通常、脱出ゲームには「脱出」という目的だけが提示されてストーリーが用意されていないことも多いが、本作は原作付きということもあって、きちんとした物語を楽しむことができる。姿を消した阿笠と灰原の消息は? また、園子と少年探偵団はストーリーに絡んでくるのか?

そして、この密室にコナンと蘭を閉じ込めた真の黒幕は? など、『名探偵コナン』のファンならついつい想像してしまう部分だろう。脱出ゲームというパズルを解きながら、全体を流れる大きな謎を推理する楽しみこそが、本作ならではのオリジナリティーである。

普通に考えて、最初に姿を消した阿笠博士と灰原が怪しいのだが……果たして何の目的があるのか?

もちろん何の企みもなく、ただ単に事故によって閉じ込められた可能性も否定できないが、さすがにそれはないだろう。推理小説のセオリーを説いたノックスの十戒によれば、「犯人は物語の当初に登場していなければならない」ので、阿笠とともに訪れた8人の中に犯人がいるはずだとか、考えるだけで楽しくなってくる。たとえ黒幕が想像できたにしても、その動機などに思いをはせるのも一興である。

脱出ゲーム部分はオーソドックスなスタイル

出口のない密室でアイテムやヒントを探し、脱出のための手段を講じるという点はほかの作品と何も変わらない。またアイテムの分解、合成といったものもおなじみの要素である。ただし、本作では正しくギミックを操作しても、ヒントを入手していない状態だと作動しない仕様になっているらしい。攻略の際にはこの点に注意して、きちんとステップを踏んでもらいたい。

第1章の部屋には4つの壁に向いてさまざまな仕掛けが。気になる個所をタップすればその部分が拡大され、さらに詳しく調べることができる

数字による鍵開けや、アイテムを組み合わせて作動させる仕掛けなど、多種多様な謎解きが用意されている。要所ごとにヒントの会話が交わされるので、それを頼りに謎を探っていこう

原作コミックはかれこれ20年以上連載されており、TVアニメも絶賛放送中のいわゆる国民的作品だけに、物語の前提をいまさら説明する必要もない。エピソードもこなれたもので、事件への導入も違和感を覚えることはないだろう。

すぐに操作方法のヘルプを呼び出せるのも、便利でいい仕様である

もちろん原作自体を知らなくても、純粋に脱出ゲームとして楽しむこともできる。また、セーブ機能も付いているので、いつでも中断できるのもありがたい部分だ。手軽さ、プレイのしやすさ、作品への入りやすさなど、他の作品に比べて頭ひとつ抜けているのではないだろうか。原作そして脱出ゲームに興味があるなら、ぜひとも遊んでもらいたい。

  • 使用した端末機種:iPhone 6 Plus
  • OSのバージョン:iOS 8.4.1
  • プレイ時間:約1時間
  • 記事作成時のゲームのバージョン:1.0.0
  • 課金総額:0円

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